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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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ピクニック

地獄の炎は俺と乃木の勇気を更に燃え上がらせ、周りの雪を溶かしていく。とはならないが、そのくらいの勢いで雪を掻き分けながら突き進んでいる。作戦名にも一種のブラシーボ効果があるのだろう。そして目標地点に近付くにつれ、雪は深くなり人間の文化圏からどんどんと離れていく。もしかしたら黒猫部隊は人外によって構成されているのではないかとも思ってしまった。

とうとう雪は腰くらいの深さになり、進めなくなってしまった。その時、リュックの中にあった謎の2枚組の円盤の存在理由に気付いた。俺はすぐにその円盤をブーツに固定した。気合いで雪の上に乗ると沈まない。間違いない。この円盤は深い雪を歩けるようにするための円盤だ。俺は乃木にも装着するように言い、この深い雪を脱出した。この円盤のおかげで10キロメートルも前進できた。うまくいけば2日後には目標地点に到着出来るだろう。今日は深い雪に洞窟を掘り、一夜を過ごした。

そして3日後。俺と乃木は目標地点に到着した。目標地点は周りよりわずかに高い丘だった。周りには何も無いが本当にここで合っているのだろうか。その時椎名から通信が入った。

「こちらテンバランス。ふたりのリュックに入っている箱を開けてください」

俺と乃木は箱を開けた。箱の中には棒と大きめの竹トンボの羽のようなもの。そして謎の装置が入っていた。

「それを組み立ててください。作り方はゴーグルに表示しますので完成したら連絡してください」

「了解した」

通信は切れた。

「よし。作るか」

作ってみると大して時間はかからず案外簡単に出来た。プラモデルよりもよっぽど簡単だ。俺と乃木はそのアンテナのような装置をゴーグルに表示されたポイントに設置して椎名に通信を入れた。

「ハーミット。ありがとうございます。ではその装置から最低でも50メートルは離れて下さい。それから今使っている通信機も壊れるので、この通信機では最後の通信になります。ふたりとも、お気をつけて」

通信が切れた瞬間俺と乃木はアンテナから離れた。50メートル以上離れてから数秒後、異様に鈍い音と共にオーロラのようなものがアンテナから発射された。椎名に聞こうにも椎名が言った通り通信機は壊れ、ゴーグルも使い物にならなくなっている。俺は通信機とゴーグルをリュックに仕舞い、ゴーグルの代わりにサングラスをかけた。乃木はその場に座って飲み物を飲んでいた。

「乃愛ちゃん、飲む?間接キスになるけど」

「飲む。それに普段から直接キスをしてるだろ?」

「そうだったね」

乃木とピクニック気分を味わっているとふたつのパラシュートが降下してくる。俺と乃木はすぐに立ち上がり銃を向けた。しかし、着地した瞬間銃を下ろした。パラシュートで降りてきたのはエディとジムだったのだ。

「エディ、なんで俺と乃木はわざわざ100キロも離れたところに着地しなきゃいけなかったんだ?」

「この辺りの80キロ圏内にあるパラシュートは小型ミサイルで撃墜されるんだ。だからわざわざ100キロも離した」

「じゃあなんでエディとジムは降下出来たんだ?」

「ふたりが設置したアンテナのおかげだよ。あのアンテナが強力なEMPを発射して周囲20キロ圏内の電子機器すべてを壊した」

だから黒猫部隊の本拠地から10キロ離れたところを目標地点にしたのか。しかし通信機器無しでどうする気なのだろうか。そう考えているとエディは俺と乃木に新しい通信機とゴーグルを渡した。

「これで問題は解決だな」

エディは俺にVサインして言った。通信機を付けると早速椎名に通信を入れた。すると椎名から次の任務を言われた。

次の俺と乃木の任務はエディとジムの援護。俺と乃木は黒猫部隊の本拠地から1.5キロ離れた地点まで移動。そして変わらず乃木が狙撃、俺が乃木を守りつつ遠くの敵を排除するのが役割だ。

俺たちは行動を開始した。

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