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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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培養

「久遠さん、最近の調子はどうですか」

「まぁ、普通ですよ。先生」

俺は数ヶ月ぶりに病院で俺の脳をこの体に入れた医者の診断を受けていた。最近風邪気味だったので行ってみるとまさか外科医が出てくるとは思ってなかった。この医者、内科医もやってたのか。

「風邪ですね。1週間分出しておきますので待合席で待っていてください」

「はい」

待合席でスマートフォンをいじりながら待っていると山口司令を発見した。だが山口司令は受付に向かわずそのまま奥へと行ってしまった。

「どこに行くんだ?」

俺はバレないように山口司令の後を付いていった。すると壁だと思っていた所が扉になっており山口司令は扉に入っていった。俺もその後にその扉へと入った。羅生門のようにいうとすれば、ちょうど「六分の恐怖と四分の好奇心」といった感じだ。

しばらく階段を降っていくと会議室程の部屋を見つけた。部屋の扉を開けてみるとそこには非現実的な光景が広がっていた。

「これは、人間か?」

その部屋にはSF映画に出てくるような大きな容器に培養液のような液体に満たされておりその中には人間が胎児のように納まっていた。そんなのが数十個程ある。容器をひとつ見てみると俺は再び驚いた。

容器の中に俺がいたのだ。それもすべての容器に俺がいた。

その時、ふたりの男が入ってきた。俺はとっさに物影に隠れ様子を疑った。

「ドク、どうなったんだ?計画は」

「ふたりのクローンを残し、すべて全滅です。それに残ったクローンのうちのひとりも脳が死にました」

「それであの男の脳を使ったのか」

「ええ」

ニヤリとして話していたドクは先程まで俺に「風邪ですね」と言っていたあの医者。そして医者の話を聞いていたのは山口司令だった。

この体はクローンだったのか。

俺はその非現実をなんとか受け入れようと努めていた。山口司令と医者の話はまだまだ続く。

「この計画が成功すれば我々が歴史の表舞台に立てる」

「そうですね。その為にも【イブ計画】を達成させないと」

イブ計画、意味はよく分からないがとにかくヤバいという事がよく分かった。

家に帰った俺は乃木にその事を話した。

「乃愛ちゃん、エイプリルフールはまだまだ先だよ」

「乃木!本当なんだ!病院の地下に大量のクローンの俺の死体がいたんだ!嘘じゃない!」

「冗談だよ乃愛ちゃん。乃愛ちゃんが嘘をつかない事は私が一番知ってるもの」

そう言うと乃木は俺を優しく抱きしめてくれた。乃木の優しい暖かさが俺を包んでくれた。

「それで乃愛ちゃんはどうするの?」

「それを考えてなかった。ただ、この話はふたりの秘密にしておこう」

「どうして?」

「悪いことはいつかバレるんだ」

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