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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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忍び込み

それから数日、バレたのは俺たちのほうだった。ただ、それに気付いたのは山口司令ではない。幸か不幸か山猫だった。最初は山猫も俺の冗談だと思っていたらしいが段々本当の話だと気付いたらしい。山猫もここ最近の山口司令の行動を怪しんでいたらしい。山猫が言うには隠し事をした表情だそうだ。

「山猫、その表情っていうのはどんな表情なんだ?」

「たまにニュースとかで詐欺師の顔を見るときがあるだろ?そいつらの表情に似てたんだ」

山猫はまるで教師のように言った。

「なんだか悪そうな顔だね」

「真理亜ちゃん、悪そうじゃなくて悪い奴になったんだ。山口さんは」

山猫は何かを考えるようだった。山猫の事だ。どうせ「今日はどのガールズバーに行こうか」とでも思っているのだろう。

「おい、久遠。俺は『今日はどのガールズバーに行こうか』なんて考えてないからな。どうすればその計画を中止に出来るかを考えているんだ」

「山猫は人の心でも読めるのか?」

「いや?人の表情がおしゃべりなだけだよ。それに久遠は表情豊かだ」

山猫はやはり教師のようにそう言った。

「でもさぁ乃愛ちゃん。乃愛ちゃんそっくりの娘がもうひとりいるかもしれないんでしょ?」

「山口司令の話によるとな。もうひとり俺がいるなんて不気味過ぎるだろ」

「でも、なんで山口司令と医者はクローンの死体をいつまでも残しているんだろう」

俺のその疑問に山猫は答えのようなものを出してくれた。

「研究材料だろうな。その手の研究は大量の人間の体が必要になってくるし。恐らく、その計画の目的はただ単にクローンを造るためではないらしい」

「というと?」

俺がそう聞くと山猫はしばらく考えてその回答をひねり出してくれた。

「それが分かれば苦労しない」

「だよなぁ」

「とりあえずもう一度病院に行ってみようよ」

「山猫、俺は乃木に1票入れる。オムレツを作るには卵を割らなきゃいけない」

「久遠、なんだそのセリフは」

「虎穴に入らずんば、みたいなことわざだ。行動しなきゃ何も起きない」

俺は謎の勇気に奮い立たされていた。そんな俺はいつの間にか拳銃の手入れを始めていた。乃木もそれに釣られて弾倉に銃弾を込めていた。

「仕方ないな。ふたりの面倒を見てやるよ」

山猫は面倒そうにソファを立ち言った。

「それと山猫、ひとつ聞いて良いか?」

「久遠、どうしたんだ?」

俺は山猫の股間に蹴りを入れてから「いつから家に忍び込んでたんだ」と聞いた。

「い、1時間くらい前から、、、」

山猫は苦しみながらも答えた。

「乃愛ちゃん、とうとう容赦が無くなってきたね」

「なんかもう、我慢できなくなった」

「乃愛ちゃんは悪くないよ」

乃木は俺の頭を撫でながらそう言ってくれた。とりあえず山猫を家から出した。

「乃愛ちゃん、本当に病院に行くの?」

「男に二言は無い」

「乃愛ちゃんは女の子だよ」

「脳は男だ」

このやり取りは何回目だろうか。定期的に行っている気がする。だが、本当にこの体の真実を知ってしまって良いのだろうか。真実を知ったときに気が狂ってしまうのでは無いだろうか。真実を受け止めきれず自殺してしまうのでは無いだろうか。マイナスな思考が数十秒程俺の脳を這いずり回った。

だが、心はすでに選択していた。「真実を知りたい」と。

その日の夜は早送りのように過ぎていき、気が付くと朝になっていた。

「乃愛ちゃん、起きた?」

「あぁ、よく寝た」

俺と乃木は準備を整えて病院へと向かった。

病院に着いた俺と乃木は前回と同じように壁のような扉を開け地下へと降っていった。前回開けた扉の隣にある扉を恐る恐る開けると培養室とは違い、明るい観測所のような部屋だった。その奥には扉があり、開けようとすると乃木に止められた。

「乃愛ちゃん、これ」

乃木の指差す方向には監視カメラの操作用のパソコンがあった。

「これを止めなきゃ」

「乃木、出来るか?」

「余裕だよ」

乃木はパソコンを操作して監視カメラを止めたようだ。

「乃木、開けても良いか?」

「もう大丈夫だよ」

扉を開けると普通の生活空間のような十畳程の部屋だった。そして奥にはベッドがあり、ひとりの少女が眠っていた。だが、俺はこの少女を見たとき俺は驚きを隠せなかった。

「乃愛ちゃん、この娘って」

「あぁ、間違いない」

その少女はもうひとりのクローンだった。

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