さあ、ケツを拭いに行くか!
朝と言えば…定番となってきた全裸ポールですが、今日は珍しく俺の方が早起きしたので未然に防げましたよ!
旅立ちの日にブラブラさんとご対面からなんて嫌ですからね!
かといって、お返しに俺が全裸待機をするという事もなく、普通の朝を迎えました。
実にいい朝だ。そんな気持ちのまま一気に部屋のカーテンを開く。
ーシャー!ー
空も俺達の旅立ちを祝福しているかのようだ!!
旅立ちにはピッタリなんじゃないだろうか…って言えるか!!!土砂降りだよ!!
「なぁ、今日本当に出発するのか?」
「軟弱なこと言いだしてんじゃない!男は一度決めたことは曲げないんだ!」
ポールが、珍しく渋っているのには理由がある。
土砂降りなんだよ?
でも、それが普通の雨とは限らないよね。
「でもなぁー…明らかにおかしいだろ?黒い雨とか…」
「この地域限定であるのかもしれないでしょ!!」
俺だって薄々感じてはいたよ?
黒い雨が降る地域なんて聞いたことないし、降ったとして地面や道にそういった痕跡は見られなかったからね。
思い返しても城や、城下町で見た植物は、みんな普通の色だった。
それに、この国に来てから普通の雨すら降らなかったのに!
呪いなのか!?黒い雨がとんでもない量降ってるなんて呪いとしか思えない!
取り敢えず、俺は旅立てるように動きやすい服装に着替え、しぶしぶズボンを脱いでいるポールを目の端に捕らえると、無駄に引き締まった尻を蹴りあげ、ライルから支給された鎧を着させた。
大の男が、雨如きでごねるんじゃないって話だよ。
旅をしてたら、雨だって雪だって、場所によっては火の粉や灰だって降ってくるんだぞ!
でも、黒い雨っていう呪いじみたものが何なのか知ってスッキリしたいので、ポールに頼んで通信機でイヴェコを呼び寄せてもらった。
イヴェコが、どこにいるかもわからなかったので、時間がかかるかと勝手に判断し、部屋に届けられていた軽食をテーブルに広げ、いざ実食って時にドアがノックされた。
早くない?
お腹の音を盛大に鳴らしつつ、ポールを見ると目を合わさない。
コイツめ!とっとと食べ始めてやがる!!俺を主とするなら先に食べるっておかしいでしょ!
奥歯をギリギリと擦り、ドアを開くといい笑顔で自転車を壁に立てかけているイヴェコの姿があった。
自転車通勤ですか…それにしても、そのフレームとホイールは細いと思いますよ。
バーハンのロードじゃんか!
そら、早いけども!廊下をそれで走ってきたら事故っちゃうよ!
俺の記憶が確かなら相当スピード出るよね!?
心の中で、ツッコミが追いつかない状態の俺を横目に、スポーツって最高って言う爽やかな笑顔で部屋へと入ってきたイヴェコ。
「おお!私の為に朝食まですいません。」
「…沢山あるからどうぞ。」
何も言うまい。
人の良さそうな熊さんに基本弱い俺だよ。
本当なら騎士であるポールが、お茶を入れたりするんだと思うんだけど…子供の俺が、オッサン二人を丁寧にもてなしているような状況に涙目です。
あれ?俺って貴族なんだけど…扱いがだんだん前世と変わらなくなってない?
「イヴェコ、今降り続いている黒い雨は何なんだ?」
「あれでしたら、もう少ししたら止むと思いますよ。アクア様が、上質の栄養水を雨ごいして降らせてくださっているので。」
せかせか動いている俺を他所に話を進めだしたポールには、もはや殺意しかありません。
後でブルーノの噛んだ痕を引っ掻いてやります。
イヴェコの話だと、この土地には雨が降り辛く、作物が育ちにくい。
地下水や湧き水はあるのだが、地表自体は水気がなく、発芽してもすぐに枯れてしまう。
それを解決したのが、定期的に降らせるアクアの雨である。
アクアは、リヴァイアサンという龍で水を司っているから天候を操ることもでき、魔力で雨雲に栄養を混ぜて降らせている。
本当に俺の仲間はチートですね。
俺もチートTUEEEEなハズなんだけど…魔法使えないよ!腕っぷしも弱いよ!ご長寿なだけじゃないか!
やめよう…ネガティブな気分になってしまう…
取り敢えず、雨は止むらしいから支度を整えていつでも出れるようにしておこう。
オッサン二人にそう告げて、やっと朝食にありつけた。
酷い食い散らかし方してたら泣こうかと思っていたけど、ポールは無駄に俺のことがよく分かっているので、大皿に俺の好きなものだけを取り分けて残しておいてくれた。
責めることができないアフターフォローに、ちょっと感謝して、かなり悔しい気持ちになった。
「ポールって無駄にいい男だよね。」
「自慢の婚約者だって宣伝してもいいぞ。」
「婚約は解消だよ。本国のエルグランも分かってくれたんだから続ける意味がないでしょ。」
「日に日に可愛げが無くなっていくな…俺を誘惑しまくっていた天使はどこにいってしまったのか。」
「目の前で、朝食食べてるよ。大体、誘惑なんてしてないから!イヴェコが誤解するからやめて。」
俺たち二人のやり取りを目に涙を溜めて優しく見守っているイヴェコに、複雑な気持ちしか沸いてこない。
言いたいことわかるよ?
やり取りが段々懐かしい感じになってきてるって…でも、前ほど荒々しくはなれないかな。
魔法が使えないからね!
黒い雨が上がると、空には虹かかかってるんだけど…建物とか地面、草木が真っ黒でなんだか死の国って感じです。
魔王が居なくなって世界に平和が訪れた…ってモノローグが聞こえてきそう。
「イヴェコ、この景色って…呪いレベルだよ。」
「ああ、数分したら黒から無色へと変化しますよ。土や草木は栄養を吸収して、それ以外は蒸発して消えてしまうんです。」
なるほど。それなら、城下町が綺麗なままなのは頷ける。
この国は、俺の仲間達によって回っている国なんだな…
雨が止んだことで馬に跨り、見送りに来てくれていたライルやアジュ、カンバーにダッセルへお礼を言って、イヴェコに案内されるまま地下道を通ってエルグラン国を後にした。
みんな、泣いたり騒いだりするかと思ったけど、そんな人は一人もいない。
逆に怖いんだけど…アジュ辺り何か言いそうだと思ってたのに。
旅を続けて行くとこの時、皆が何を企んでいたかが分かった。
でもそれは、まだ先の話。
俺達は、なんだかんだ言いながら旅を開始したのだった。
目的地は、原点に返ってカラコット村跡地!
現状がどうなってるか分からないと動きようがないからね。




