ep.7 友好証明なら、外交官にお任せを
考えた末に、僕は演出型の贈り物を贈ることにした。
次の日、僕は妖精王と吸血鬼王の玉座の下で言った。
「本日は酒好きな妖精王様のために、世界一高価な美酒を用意しました。酒は液体。つまり形がありません。ですが、普通の酒ではありません」
「普通じゃない?」
妖精王と吸血鬼王は首を傾げた。
僕が吸血鬼の国で最も高級な酒を杯に注ぐと、妖精王と吸血鬼王は混乱した顔をした。
――これはリアクションが楽しみだな。
僕はポケットから、ジュエリーケースを取り出した。そして、蓋を開いて中身を二人の王に見せた。
「これは、妖精の国で最も高価な宝石。グリーンダイヤモンドです」
「それは、見れば分かるが……」
腑に落ちない顔の王二人に微笑むと、僕はグリーンダイヤモンドを酒のグラスに入れた。
入れた瞬間、グラスの中に泡が立ち、ダイヤモンドはゆっくりと砂のように溶け始めた。
「一体、何をしているのだ?」
「宝石は形があります。ですが、魔法で酒に溶かしたので、形が無くなりました」
――まじか。
そう言いたげな顔で、妖精王と吸血鬼は目を見合わせた。
宝石が溶け終わると、僕はグラスを高く掲げた。
「僕は、この酒を吸血鬼王に献上します」
「はあ?!」
妖精王と吸血鬼王の声が、ぴたりと重なった。
「吸血鬼王は仰いました。妖精王をこれ以上ないくらい喜ばせる贈り物を持ってこい、と。ですが妖精王に贈れとは言っていません」
「なるほど……」
吸血鬼王が呟くと、僕は心の中でガッツポーズを決めた。
――よし! ここから見せ場だ!
「僕は考えました。親友であり、友好国の王である吸血鬼王の喜びこそ、妖精王のこれ以上ない喜びに違いない、と。ですから、吸血鬼王に喜んでいただきたく、世界一高価な酒は吸血鬼王に献上します」
「上手いね」
妖精王が感心して言うと、僕は続けた。
「僕は、世界一素晴らしい吸血鬼国の美酒に、我が国で最も高価な宝石を溶かしました。これは、手を取り合って繁栄する両国をイメージしたものです。友好と信頼こそ、物に勝る宝もの。両国の友好関係が、これからもますます繁栄することを祈願いたします」




