↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/10

ep.4 才覚バトル、開幕

「面白い。やってみろ」


 竜王がそう言うと、オリーヴァ侯爵は笑顔で頷いた。そして、赤杯を手に取った。


――赤い液体を飲むのか!? 毒味なしで!? 毒ならどうすんだよ。


 私がぎょっとした瞬間だった。


 オリーヴァ侯爵は杯を勢いよくひっくり返しし、中身を床にぶちまけたのだ。


――はあー!?


 臣下たちがどよめいた。竜王も驚いた顔をした。


 オリーヴァ侯爵は空の杯を盆に戻すと、青杯、黃杯も床にぶちまけた。しかも、三杯の空の杯を床に投げ捨てたのだ。


――カラン……。


 私たちが息を呑む中で、杯が床に転がる音だけが響いた。


 オリーヴァ侯爵は跪くと、竜王を見上げて微笑んだ。


「床に中身を全部こぼしてしまったので、俺は中身を飲み干すことができません」


――はあ? そんなのありかよ……。


「王は死をもって償えと仰せですが。償うなら、俺は生涯をもって王に忠義を尽くしたい!」


 オリーヴァ侯爵の朗々とした声が広間に響き渡った。


 私は息を呑んだ。


「死は一瞬ですが、生は永遠。時間があれば、お怒りを買った失態は挽回できる。

より竜王様に尽くすことができます。俺は死ではなく、あなたに生きて仕えたい。だから毒杯を飲みたくありません。

竜王様は、どんな手段を用いても毒杯を飲まずに済んだら、私を許すと承諾してくださいました。手段とは、そもそもどの杯にも口をつけず、飲めない状況をつくることです。

床に流れた毒杯と同様に、どうかお怒りも、水に流していただきたい。今後はより忠誠を尽くして、お仕えいたします。そして、俺の機転を評価して頂きたい」


――オリーヴァ侯爵、上手すぎるな。


 私は素直に感心した。拍手をしたくなった。


「いかがでしょう? 俺は諫言を聞くだけの忠臣に値するのでは?」


 オリーヴァ侯爵は、自信に満ちた笑みを浮かべた。


「アハハハハハハッ」

 竜王の軽やかな笑い声が広間に響き渡った。


「俺から言質を取り、機転で死の危険を乗り切り、危機を忠誠の証明にしたか。流石はオリーヴァ侯爵だ! 実はな、毒杯と言うのは嘘だ」


「は?」

 私とオリーヴァ侯爵と臣下たちの声が、ぴたりと重なった。


 竜王と宰相だけが、クスリと笑った。

「三杯とも、全部着色した水だ! 俺はな、オリーヴァ侯爵の才覚と機転を試したかったんだ。死の恐怖を前にビビる腰抜けの諫言なら、聞く価値ないからな」


――まじかよ……。


 私は呆気にとられた。だが、竜王は楽しそうな表情から一転、急に表情を引き締めた。


「それに、不興を買ったくらいで有能な臣下を殺すわけないだろ? 王には、勇気を出して痛いことを言ってくれる臣下が必要だ。オリーヴァ侯爵のような、機転と才覚と忠誠に満ちた臣下を持てて嬉しいよ。お前の諫言を聞くとしよう」


「ありがとうございます! 竜王様!」

 オリーヴァ侯爵は立ち上がると、嬉しそうに笑った。


――竜王……。紛らわしいことしやがって。オリーヴァ侯爵を試そうとしたのか。だが、オリーヴァ侯爵の諫言を素直に聞くより、この展開の方が王の器を示せるな。……一芝居打ったか。


 私は心の中で、オリーヴァ侯爵と竜王に拍手を送った。


 すると、宰相が穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。


「臣下は国王自身を映す鏡だと言われます。オリーヴァ侯爵を見ていると、竜王様が賢君な理由が分かりますね。」


――おい宰相。ついさっきまで竜王は暴君だったぞ。


 私の突っ込みなど知る由もない竜王は、楽しそうに笑った。


 広間の緊張が、ようやく和むのが分かった。


 すると、竜王が私たちに聞いた。

「お前たちなら、どうやって解く? 解答に自信がある者は挙手しろ」


 臣下たちが一気にざわついた。

「この難題を解くだと?」

「普通に解いたら、毒杯に当たって終わりだ……」

「あれほど鮮やかなオリーヴァ侯爵の後に、自分の解答なんて言えるわけない」


――ったく。竜王め。オリーヴァ侯爵以外も試す気か。


 私はすっと右手を挙げた。その途端、臣下たちがどよめいた。


「デュッカート伯爵だぞ!」

「自信があるのか……?」


 臣下たちの声が聞こえたが、私は気にしないで竜王に言った。

「私が解答いたします」


 竜王は面白そうに口角を上げた。

「ほう。言ってみろ」


「では申し上げます。問題の制限時間は三十分でしたよね? まず私は、食堂に猛ダッシュします」


「はあ?」

 竜王も臣下も素っ頓狂な声を上げた。


「なんのために?」

 とオリーヴァ侯爵が怪訝な顔で呟く声が聞こえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。