表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

行動開始

再び、警告灯の点滅音だけが残る。


レンは天井を見上げたまま、数秒動かなかった。


「……なるほどね」

呟く声は、意外なほど冷静だった。


状況を整理しよう、今の船はもう長く持たない、近くに放棄された大型船がある。自動でドッキングするから、そこへ移れ、シンプルだ。


「要するに、状況の確認のアナウンスか」

レンは軽く肩をすくめた。深刻な事態であることを端的にしめす、そして行動を促す。試験としてはありきたりな設定だ。試験で重要なこと、それは現状を受け入れること、それが講座で何度も叩き込まれた基本だ。


「でかい船に移るのが最初の試験かもしれない」

試験はもう始まっている・・・。

レンは視線を壁の配管から手元の端末へと移す。


「地図更新されてないかな……」

画面を確認するが、やはり自分の現在地を示す点があるだけだ。ドッキングポイントの情報もなければ、移乗先の船の構造も分からない。


「まあ、これからどんどん分かってくるんだろうけど」

独り言が口をついて出る。静かな通路に自分の声が響くのは、少し落ち着かない気もしたけれど、沈黙に耐えるよりはマシだ。


状況はシンプルだ、この船はもたない、別の船へ移る必要がある。試験で提示された目標は、移動して、生き残って、その先で機能を復旧させる。

ただそれだけだ。

思考に迷いはない、崩壊リスクが高いなら、ぐずぐずしている暇はない。さっさと移るのが正解だ。そう判断するのは当然のことだった。


そのとき、再び足音が聞こえた。今度ははっきりと近い。

レンは視線を前に戻す。暗い通路の奥、非常灯の明滅に合わせて、誰かの影が揺れた。

誰かがいる。

レンは足を止めた、迷わず歩みを寄せるべきか——いや、少し待て。


相手がどういう人間か分からない。最初の三日間は危害禁止のルールがあるけれど、いきなり飛び出して驚かせるのは得策じゃない。まずは様子を見よう、それが適切な行動のはずだ。


「……おーい」

声は大きすぎないように、でも届くように、明るく呼びかけた。

暗がりの中で人影が止まる。相手の端末のライトがこちらを向き、レンの顔を照らした。

髪が少し長めで、表情は硬い、緊張している様子だが、非友好的ではないようだ。


「……同じか」

相手が先に言った、落ち着いた声だ。


「ああ、試験参加者だよ」

レンは軽く手を挙げて見せた。


「びっくりさせちゃってごめんね。誰かいると思ってさ」

「NPC的ななにかとか、敵対生物的な何かの可能性もあるから」

「過去の試験では、初見でモンスターとかもあったようだし」

レンは警戒されないように少し説明口調で話す。

相手は特に警戒する様子もなく、端末を下ろした。


「状況は把握してる?」

「ドッキングのアナウンスが流れたんだ。この船はもたないらしい」

レンは軽い感じで聞いてみる。


「聞いた。でも詳細は不明だな」


「だよね。地図も更新されてないし」

レンは自分の端末を軽く叩いてみせた。


「ここから一番近いドッキングポイント、分かる?」

相手は首を振った。

「まだ探索範囲外だ。歩いて探すしかない」


「そっか。じゃあ、一緒に行かない? 一人より二人の方が効率いいし、なんかあった時助け合えるし」

レンは自然と提案していた。迷いはない、合流する、それが最適だと判断したからだ。

相手は少し考え込むような間を置いてから、頷いた。


「……そうだな。それがいい」


「よし! じゃあよろしく。俺はレン」


「シグマだ」


「シグマか。カッコいい名前だね」

レンは明るく笑った。緊張感のある状況だけれど、挨拶くらい明るくやらないとやってられない。

「それにしてもさ、でかい船に移るんだってね。ロマンあるよなぁ。どんな船なんだろ? デッキとかプールとかあったら最高なんだけど」


「……そんな余裕があるとは思えないが」

シグマは呆れたように言ったけれど、口元が少しだけ緩んだ気がした。


「夢は見るもんでしょ! なあシグマ、あっちに階段見えるんだけど、そっちから上層に行ってみない?」


「ああ。ドッキングポイントは艦の中心にある可能性が高い」

二人の歩幅が揃う、無駄話をしながらも、視線は周囲を警戒していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ