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ドッキングベースを目指して

通路の途中で三人目に出会った。

通路の壁に背を預けている若い女性で、端末を胸の前で見つめていた、少し顔色が悪いかもしれない。


「おーい! 大丈夫?」

レンが声をかけると、彼女はビクッとしてこちらを見た。でも、震えてはいない、すぐに体勢を立て直した。


「……ええ、大丈夫」


「アナウンス聞いた? 移動しないとダメなんだって」


「聞いた!この船は危ないんでしょ?」


「みたいだね。俺たち今からドッキングポイント探しに行くところなんだけど、一緒に行かない?」


彼女はレンとシグマを交互に見て、小さく頷いた。


「……お願いします」


「オッケー! じゃあ三人で行こうか」


三人の歩幅が自然と揃った。

必要な情報だけが交わされるわけじゃない。こうして声を掛け合って、行動を共にする、それが自然なことだと思えた。

みんな試験を理解している。

レンは先頭を歩きながら、前を向いた。


「大丈夫、なんとかなる」

小さく自分に言い聞かせる。俺たちは正しい選択をしているはずだ。


やや遠くから、複数の足音、同じフロアを、同じように探索しているリズムだ。

レンは視線を前に戻し、手を上げて隣の二人を止める、シグマと女性が無言で頷く。全員が同じことを理解している——これは試験だ。敵でもない味方でもない、単なる他の参加者の可能性が高い。


「誰かいるね」

レンは小声で言って、端末のライトを軽く揺らした。暗がりにいる相手に、こちらの位置を知らせる合図だ。無闇に近づくのは避けた、情報交換できる相手なら有用だ。

暗い通路の奥で光が揺れた。相手も同じように、こちらの存在を確認していた。


「参加者だよ——」

レンは一歩前に出ながら明るく声をかけた。

「俺たちもだ」

陰から現れた人影の一人が言った。髪は短めのショートカットで、端末を構えたまま、警戒はしているが敵意はない。


「ああ、同じ同じ」

レンは肩を竦めた。

「状況把握してる? この船、もたないらしいよ」


「ドッキングのアナウンス、聞いた」

相手は短く頷く。「

移動しないといけないらしい」


「そうそう!」

レンは少し早口になる。

「でも詳しいこと分からないんだよね。近くのドッキングポイントとか知らない?」

相手は端末を確認する、地図は更新されていない。当然だ。まだ探索範囲が狭すぎる。


「分からない。歩いて探すしかないな」


「了解了解! 向こうに階段があったよ。そっちから上層に出てみない?」

レンは指を指し示した。新しい相手は少し考える間を置いたが、特に躊躇いもせず頷いた。


「行こう。情報は多いほうがいい」


「だよね!」

レンは笑顔を見せる。

「俺はレン。君は?」


「シノン」

先ほどの一人が短く答える。


「シノンね。よろしく!」

レンは右手を差し出す。握手は無し。時代遅れの習慣だ。


レンは先頭に立ち、再び走り出す。


「あのさ、ドッキング後の船ってどんな感じだと思う?」

走りながらレンが口を開く。

「映画みたいにゴージャスな廊下とかあったりして!」


「そんな余裕があるとは思えないが」

シグマが横目で見てくる。


「でも期待したいじゃん? 人生にはロマンが必要なんだよ!」


「試験中だからな」

新たな参加者シノンは黙って聞いていたが、軽く口元を緩めた。


「試験でも楽しむ努力は大事だって! 生き残るためにもさ!」

レンの声は明るかった。それが彼自身の感情でもあり、周囲を安心させるための演出でもある。


「それにしても」

階段の前で少し足をゆるめ、レンはシノンに向かって問いかける。

「何をしてたの? 」


「装備を少し調べてた」

シノンは端末を示す。

「初期支給以外に何か落ちてないかと思って」


複数人となり足音が少し大きくなる。レンは軽く周りを見て状況を確認し、上へと進む判断をする。

階段を上りきったとき、スピーカーが再び活性化した。


「——ドッキングシークエンス、開始」


機械的な音声が通路に満ちる。レンは足を止め、自然に上を見上げた。


「予想より早い」

誰かが言った。レンは同意した。


「ドッキング完了まで、あと十五分」

床がわずかに震えた。遠くで金属が軋む音、二隻の船体が接近し、接合機構が作動している。


「急ごう」

レンは言った。

誰も異論を唱えなかった、十五分は十分なはずだ。

通路を進む、さらに多くの人が集まってくる、先頭を走るのは別の参加者だった。

レンはそれに従った、なんとなくそっちがあっている気がした。


「ドッキングってどっちだと思う?」


「たぶん中央寄り。構造的に」

集団の男性の一人が答える。


「根拠ある?」


「大きい船なら接続ポイントは限られる」

説明は簡単だったが、納得はされる。


「じゃあその方向に行ってるんだね」

自然に流れができる。

通路は徐々に広くなり、人の数も増えていく。

同じように移動する参加者たち。

小さなグループがいくつもできている。


「結構いるな」


「同じこと考えてるんだろ」

当たり前のように、同じ方向へ進んでいる。


警告音、それと遠くで爆発音が聞こえている

そんな中通路を走って進んでいるとやや後方で


”ドォーン!!!”

という音が通路に響く、通路を走っている集団の右の壁が一部吹き飛ぶ

破片が飛散する。


「痛っ!」「うわっ!」「あっ・・・」「きゃー!」

様々な声が響く。

レンは後ろを振り返るが、通路の壁が崩れ、がれきでけがをしている人、倒れている人が目に入る。

助けに行くか迷ったが、人の波はやや勢いを増して進んでいる。

立ち止まると人の波に押しつぶされそうである。


これはシミュレーション試験、実際に死ぬわけではない。

ここでの脱落はあまりにも早いが、これでDランクになることはないだろう。90%以上の結果はBランク以上だ。ここで無駄な時間を浪費するのが自分の評価を下げる選択かもしれない。

人生の将来を決める試験、試験対策講座でも、必要な犠牲も判断できないといけないと教えられてきた。

これはそういう試験、高いストレス耐性とストレス下での正確な判断が求められるといわれている試験なのだから・・・。


前に向かって進むのが最善と考え、集団の流れについて走る。

やがて通路が開けた。


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