リーリヤが……!
「……セイン様」
「どうしたんだい? アンダルト。今日は、やけに酒量が多いように思うけど?」
「……最近は、こんなものですよ。今日が少ないくらいです」
「それは、少々飲みぎてないか? まだ、若いとはいえ、飲みすぎは体を壊す」
「そんなことは、ありませんよーだ。飲まないとやってられないんだから、仕方がないじゃないですか!」
酒を飲んでいるので、少々気が緩んでいるんだろう。アンダルトは、フワフワしたようであったが、セインはいつものことと割り切って聞き流してはいないようで、苦笑いをしている。
私もここまで酔っているアンダルトを見るのは、初めてで驚いた。
……アンダルト様は、お酒が強くて、少々では酔わないはずだわ。いつも飲んでいる以上にたくさん飲まれたのね。お酒に関しては、任せてあったけど……とてもアンダルト様らしくない。
「どうしたんだい? アンダルトらしくもない」
「ふんっ! らしくなって、どういうことですか? 俺は、リーリヤが、あの小うるさいヤツが側にいなくなったら、こんなものですよ!」
「……リーリヤ嬢が?」
「知らなかったんですか? リーリヤがいつも側で、あれはダメ、これはダメ、それもダメ! って小言を言っていたから、今まで夜会でリーリヤに腹を立てることはあっても、俺が夜会やその他の場所でこんな惨めな気持ちになったことがなかった。失敗してもすぐにリーリヤがフォローをしてくれていた。リーリヤがいたから、まともな公爵家の後継ぎだって言われていたらしいですね! あぁ、くそっ! 知らなかったのは、俺だけか。……リーリヤ、リーリヤ。みんな、人の顔を見れば、リーリヤがいれば! リーリヤのおかげで! リーリヤがなんだっ! あんなつまらない女のどこがみんないいんだ! くそぅ……」
目の座ったアンダルトが見上げるようにセインに絡んでいく。その姿は、とてもじゃないが見ていられず、アンダルトを止めに入りたくなり、物影で出たり入ったりを繰り返す。
「セイン様も、リーリヤが好きでしたよねぇ?」
……見ていられない。アンダルト様、こんなに飲んでいては、自身を壊してしまう……。
「どいつもこいつも両親や弟たちでさえ、リーリヤが側にいないから、俺はダメなんだと口を揃えていう」
「リーリヤ嬢ではなく、アンダルトは、今、エリーゼ嬢と婚約したんだろう? リーリヤ嬢がいてもいなくても、支えてくれるはずのものが側にいるではないか?」
「エリーゼか……」
「それで、公爵は……」
「……エリーゼとの婚約では、次期公爵を認められないとハッキリ言われているんです! リーリヤ以外との婚約でもかまわないが、エリーゼでは公爵を継がせるわけにはいかないと、ダメだと!」
怒気をはらむ声は、本音だ。ずっと、心の中にあったのだろう。私がいなくなったら、公爵になれないと、アンダルトはうすうすわかっていたのだから。
「それは、なんとも」
「笑えばいいんです! リーリヤに逃げられた情けない男だと。今日の失敗だって、リーリヤがいれば、することはなかった。リーリヤがあの場にいたら、全て丸くおさめていた。あぁ、くそう! リーリヤがいなければ、俺は何も出来ない!」
……アンダルト様。
「くそっ!」と、顔を覆うようにして、アンダルトは俯いた。
……一体、どんな失敗をしたのかわからないけど、エリーゼ嬢は、こんなになるまで、アンダルト様のことを見ていなかったのかしら? アンダルト様を大切に想っているのなら、側で寄り添ってあげないのかしら?
アンダルト様を支えることは、公爵家の外聞にもかかってくるのだし、アンダルト様の足りない部分を助けるのは婚約者として、当たり前のことなのに。
泣いているのかと思う程、俯いてしまっているアンダルトの顔は見ることができないが、その苦しみは長年一緒にいたからか、手に取るように伝わってきて、胸が締め付けられるようであった。
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