11 仕事人クモリ
◆1◆
クモリは一週間ぶりに〈天下王将〉ののれんをくぐった。
「クモリさん、こっちです」
奥のテーブル席に座るヤマセが言う。
彼は得意げな笑みを浮かべていた。
「よくあの作曲家を説得できたな」
クモリは席に座るなり彼を誉めた。
「すごいでしょ?うちのタイヨウさん」
「ああ。あの籠絡術はシノビから見ても魅力的だ」
「だったらクモリさんもやりますか?アイドル」
「からかうな……」
「ボクは本気ですよ。恵まれた運動神経、スタイル、頭脳。絶対アイドルに向いてますって」
「ところで、なんでまたこのラーメン屋で打ち合わせするんだよ。もっと都心の方がいいだろ」
「何をおっしゃいます。すばらしいラーメン屋じゃないですか。おいしいし。クモリさんも周りに広めてくださいよ」
「いやにこの店の肩を持つじゃないか」
たしかに味はいい。
いいのだが。
それ以外に褒められるところがないため正直人には勧めたくない。
あいも変わらず小汚い店だった。
クモリが店内をまじまじと眺めていると、店の奥から水とおしぼりを持った店員が出てきた。
レインだった。
「またタダ飯代わりの皿洗いか?」
「いえ、住み込みでアルバイトを始めたんです」
「ここの店長はレインが何者か知っているのか?」
「もちろん。"用心棒にちょうどいい"と喜んで受け入れてもらえました」
「イかれてやがる」
「なんでも店長は〈ロデリック商会〉で料理修行していたらしいですよ。なるほどあそこならレイドボスがそこらへん歩いててもおかしくありませんね」
「〈ロデ研〉もイかれやがる」
「注文は?」
しびれを切らしたレインに促され、クモリは壁にかけられたメニューを見た。
前回は"あっさり味"一点しかなかったが、今回は"こってり"も復活していた。
それどころか"こってり…6G"と書かれた札の横にはずらっと十点ほど定食メニューが並んでいた。
「馬鹿にラインナップが増えてるじゃないか」
クモリは怪訝な顔で言った。
「こうすれば面白いから、お客さんもいっぱい来るだろうって店長が言ってた。で、注文は?」
レインが答える。
「あっさりひとつ」
「前と一緒でいいのか?我の考えた"火炎邪龍の赤涙定食"とかオ
ススメだぞ」
「断る」
「こってりラーメンに唐辛子をドバーッ!っとーー」
「断る」
レインは厨房へとすごすご帰って行った。
「しかしよかったですね。レインさんの宿と就職先が一気に決まって」
「そうだけど……新たな不安がひとつ生まれた……」
数分して、レインがラーメンが運んで来た。
「へい、ラーメンおまち」
「レイン、ちょっと聞いていいか?」
「なんだ?」
「ここの経営状況についてなんだが」
「けーえいじょうきょう?」
「まぁ、なんだ、儲かっているのかということだ」
「ああ。店長曰く、このままだと今月で潰れるねーははは!、だそうだ」
「ちょっと店長呼んでこい」
レインの呼びかけに応じて、厨房からメガネをかけた痩せ形の中年男性が出てきた。
「またレインくんが何かしましたか?」
オドオドした態度だった。
「いえ、違います」
「ならよかった。他になにか?」
「私はレインの管理者でクモリと申します」
彼女は店長に〈執政公爵家 特殊危険物管理責任者 クモリ〉と書かれた名刺を渡した。
店長は恐縮しながら、片手で名刺を受け取った。
「公爵家の方ですか!これは失礼しました。こんな格好で……」
「いえ、こちらこそレインを雇用していただきありがとうございます。ご存じの通り彼女は特殊な存在ですから。なかなか落ち着けるところを見つけられずにいたんです」
「いえ!こちらこそレインくんがいてくれて助かってますよ。いつ僧兵が再び襲ってくるかも分かりませんからね」
「僧兵?」
「あぁ、いえ、気にしないでください。こちらの話です」
「はぁ……。とにかく〈執政家〉としても、彼女の安定して管理できるこの場があることは非常にありがたい。我々もできるかぎり支援をしていければと考えております」
「ということは補助金をいただけるんですか!?」
「それはつまり補助金無しでは事業継続が難しいということでしょうか」
「そうなんですよ〜」
「…………。レインからも聞きました。このままだと今月中に潰れると」
「お恥ずかしい限りです。物件の維持費も払えそうになくて」
「残念ながら金銭的支援はできません。ただ、このまま店がつぶれるのは我々としても困ります。ですのでせめて情報面で支援していければと考えています」
「経営コンサルというやつですか」
「はい。私自身、普段は行商人としても活動しておりますので、お力添えはできるかと」
「〈イズモ〉でぜんざい売ってたもんな」
レインとの出会いも行商人として潜入している最中でのことであった。
たった半月前の出来事であるが、懐かしい思い出である。
「〈執政家〉に助けていただけるのであればぜひ!藁をもつかむ思いでしたので」
店長はクモリの提案を快諾した。
「悪いなヤマセ。衣装の打ち合わせはまた後日にしよう。こっちの緊急事態の方を優先させてもらう」
そう言って彼女は店長を連れ店奥へ消えていった。
◆2◆
翌日午後、クモリは〈天下王将〉にヤマセを呼び出した。
「ラーメン屋の経営会議ですよね。ボク、いります?」
「まあ静かに聞いててくれ」
店のテーブル席にはクモリ、ヤマセ、店長、レインの三人が座っている。
机の上には大量の資料。
「ヤマトにおけるラーメン市場について、〈白砂御所〉の資料室でできるかぎり調べてきました。その上で今後の店の方針についてご提案をできればと思います」
クモリは店長にそうと言うと、メガネをクイッ上げた。
「まあそんな堅苦しくならないで。リラックスしていきましょうよ」
店が潰れるというのに、ずいぶんと脳天気な店長だとクモリはあきれつつ、
「いえ、この雰囲気で失礼します」
と言って説明を続けた。
「まずヤマトにおけるラーメン市場についてです。〈大災害〉以降に冒険者が持ち込んだ"味のある料理"。その中でも最も熱いジャンルがラーメンです。特に〈イースタル〉においては店舗数は二百、市場規模も八千万Gと二位のハンバーガーを大きく引き離しトップに君臨しています。冒険者、大地人、はては貴族令嬢まで老若男女貴賤を問わず人気を集めるジャンルと言えるでしょう」
「そうそう。特にアキバのラーメンは凄いですよ。冒険者による〈アキバ・ラーメン探求部〉なんてのもあるくらいです。当時はタテハマ系やサブロウ系が特に人気でしたね」
店長が補足した。
「そもそも〈ロデ研〉のGMがラーメン好きで、二つ名すら持ってたんですよ、えーと、なんて言ったかな……」
「〈アキバラーメン三銃士〉ですか」
店長がど忘れをヤマセが補足する。
「そう!それです!ヤマセさんよく知ってますね」
「いえそれほどでも。クモリさん、続きをどうぞ」
「このように異常な熱をもって発展を続けるラーメン市場ですが、〈ウェストランデ〉においても今年に入って急成長を遂げています。〈ミナミ〉での第一四半期で新規出店したラーメン店の数は二十軒。十二月までは二軒しかなかったので、たった三ヶ月で店舗数が十倍に増えた計算になります」
「なんでそんなに急増したんですか?」
ヤマセが聞く。
「昨年九月に〈アキバ〉で開かれた〈天秤祭〉。これが西の商人に大きなインパクトを与えました。〈天秤祭〉にて冒険者の多様な食文化に触れた西の商人たちは、この質の高い料理を〈ウェストランデ〉に持ち込めば一攫千金できると考えたのでしょう。彼らはアキバの料理人を秘密裏に引き抜いたり、抱えている料理人を東に研修に出すなどしました。結果、食の東西交流が盛んになったのです」
「僕も〈留学料理人〉のひとりなんだよね」
店長が額をかきながら言った。
「貴族のお抱えだったんですか?」
ヤマセの問いに店長は
「元々僕はとある元老院貴族の料理人だったんだ。冒険者の料理を学ぶためアキバに派遣されたんだけど、主人は〈ロデ研〉で開発した僕のラーメンを気に入らなかったようでね。クビにされてしまったのさ」
笑いながら答えた。
「……話を戻しましょう。食の東西交流により冬以降、多くの"味のある料理"が西にもたらされました。〈キョウの都〉はその影響を最も受けた都市のひとつです」
「西の大地人貴族はみんな都で生活してますもんね」
「ヤマセ殿の言うとおり、留学料理人は〈キョウの都〉に住む貴族のもとに帰ってきます。そうして持ち込まれた料理技術は市街地でいかんなく発揮され、現在でも鎬を削る状況にあります。ラーメン店も例外ではありません。繁華街である〈ギオン花街〉エリアには十五店舗が進出しています」
「そんなにあるんですか!?思ったよりも激戦区なんですね……」
「以上がラーメン市場の動向です。これを踏まえた上で〈天下王将〉がとるべき戦略について説明します」
「クモリさん、一日でよくこれだけ調べましたね」
ヤマセは資料の束をペラペラとめくった。
「一日じゃない、半日だ。もう半日は現地調査に費やした」
「都のラーメン屋すべてをまわったんですか?」
「そう。ラーメンの味は、あくまで私基準ではありますが……〈天下王将〉が都で一番おいしいと言えるでしょう」
「おお!分かってくれますか!」
店長が目を輝かせる。
「〈キョウの都〉の料理は大地人料理人が主導していますから、冒険者主導の〈ミナミ〉に比べレベルが低いというのは理由としてあります。実際冒険者の都の食への満足度は低いです。しかしここのラーメンであれば冒険者でも満足するレベルには達しているでしょう」
「じゃあなんで潰れかけてるんだ?」
レインの疑問にクモリは
「立地が悪すぎます。都心から数キロ離れてた閑静な住宅街の、メイン通りからはずれたこんな辺鄙なところでは誰も見つけてくれません」
と答えた。
店長も自覚はあったようでうなずいている。
「やはり宣伝は必須でしょうね」
ヤマセが言う。
呼応するようにクモリはうなずき、
「その通り。ただ狙う客層を決めすに宣伝しても効果はありませんから、ターゲットをまずは決めていきましょう」
と言った。
「宣伝ですか。したいのはやまやまですが……いかんせんお金が無くて」
店長はひきつった笑みを浮かべた。
「金銭面の不足についてはよい解決策がありますのでまた後で」
「はあ」
「先に言った通り、都心はラーメン激戦区です。そこからこの〈ジョージ=タカノ〉エリアまで客を引き寄せるのは容易ではありません。当面〈天下王将〉は地域住民を相手に商売するべきでしょう」
「それは、はい。そのつもりだったんですが……」
「その口振りだと、この無駄に多いメニューは〈タカノ食堂〉を意識したわけですね」
「ええ。タカノエリアで一番繁盛している店ですから、そこの戦略をパク……拝借すれば地元の人にも受けるだろうと思いまして」
「たしかに競合店である〈タカノ食堂〉はメニューの多さがウリの大衆食堂です。しかしすでに盤石な立場を築いている店と同じ戦略で戦ってもほぼ確実に負けるでしょう」
「そうでしょうか。そうですよね」
落ち込む店長をレインが「あきらめるな」となぐさめる。
「〈タカノ食堂〉はすでに地域住民から絶大な支持を集めています。癖の強い〈天下王将〉のラーメンでこの牙城を崩すのは難しいでしょう」
「あきらめた方がよさそうだ。店長」
レインの言葉を受けて店長は深くうなだれた。
「しかし"地域住民"をもっと細かく分解すれば、打開策も見えてきます」
「分解?打開策?」
店長は顔を上げた。
「〈ジョージ=タカノ〉エリアには大きく分けて二種類の住民がいます。ひとつは"代々ここで暮らしてきた住民"。そしてもうひとつは"移民"です」
「ああ、最近増えてますね。実はこの店の二階も移民の方に貸してるんですよ」
「我らの部屋の隣にも誰か住んでるみたいだな」
レインが言う。
「このエリアには現在百八十三人の移民が暮らしています。〈天下王将〉はこの移民を狙うべきでしょう」
〈Plant hwyaden〉と手を取り合い急速な発展を遂げる〈神聖皇国ウェストランデ〉は、大幅な組織改編のために慢性的な人手不足に陥っていた。
特に〈ミナミ〉と〈キョウの都〉は深刻で、農村部からの移住を奨励し、支度金を出すなど人材確保に躍起になっていた。
〈ジョージ=タカノ〉地区は風情ある町並みも手伝って、移住先として人気を博していたエリアであった。
「移民といっても二百人弱しかいませんし大丈夫でしょうか?数として少なすぎるようにも思えますが」
店長は腕を組み難色を示した。
「これくらいの小規模な店ならパイとしては十分。それに彼らは金持ちですから、客単価を上げて補えばいいのです」
「金持ち……そうか〈ギルドパス〉」
「そう。〈ジョージ=タカノ〉などの〈洛外〉エリアに住む大地人には〈ギルドパス〉が支給されません。対して移民には〈ギルドパス〉が支給されています。つまり移民の方が懐に余裕があるわけです」
「たしかに〈ギルドパス〉会計なら値段を気にする必要もないから、気軽に値上げできますね……!」
「ええ。値段を今の3倍に上げても彼らは気安く頼むでしょう。むしろせっかく農村から出稼ぎに来て、〈ギルドパス〉まで手に入れたのだから、高いものを食べたい思うはずです」
「それは魅力的な話だなあ。しかし、そんな優良顧客を他の店が狙わないのも変な話ですね」
「往々にして、移民は地域住民から嫌われるものです。移民に媚びれば地域住民の足は離れてしまうリスクがありますし、移民はいつか農村に帰りますからね。先々の経営を考えると手を出しにくい層です」
「僕もご近所さんに嫌われるのは嫌だなあ」
「不安は今月を乗り切ってから抱いてください」
「分かりました……しかし移民向けにといっても、彼らは昼間は都心に出てますよ。帰りの時間も遅いし」
「なので昼飯と夕飯の時間帯は捨てます」
「じゃあいつ売るんですか!?」
「夜です。居酒屋で一杯呑んだ後、ラーメンを食べるための店を目指してください。私はこの形態を〈〆のラーメン〉と名付けました。これなら今のところ競合店はありません」
店長はギョッとし、
「呑んだ後にラーメン!?そんな文化聞いたこと無い……!まさかこんな重いもの、腹に入るわけが……」
と難色を示した。
「そう思うのも当然でしょう。しかし、私はこの策を自信をもってご提案します。というのも昨日、ひとつの〈口伝〉を発見しました」
〈口伝〉とは〈大災害〉以降新たに発見された技術の総称ことだ。
〈エルダーテイル〉の枠にとらわれない柔軟かつ応用性の高い技術であり、"味のある料理"も〈口伝〉のひとつに数えられる。
「〈口伝〉!?最新技術じゃないですか……!その内容とは!?」
「居酒屋で飲食をした後にラーメン屋を見ると、胃の中のものが突如消え、無性にそのラーメンが食べたくなる、という〈口伝〉です。これを私は〈胃世界転生〉と名付けました。この〈口伝〉を応用し、呑んで帰ってきた移民を店に呼び込むのです」
「それただの別腹ーー」
ヤマセが言いかけたが、興奮した店長が横やりを入れる。
「すごい!それなら確実に客足が延びますね……!」
彼は〈口伝〉という言葉が相当気に入ったらしく、妙にテンションが上がっていた。
私と同じく、最新技術という言葉に弱い人種なのだろうとクモリは思った。
「ですのでメニューとしてはラーメンの他、酒や肴も追加した方がいいでしょう。利益率も高いですし」
「任せてください!お酒ならいくらでも合成してつくれます!」
「それ大丈夫なやつでしょうね?」
「おそらく!」
店長は自信にあふれた声で答えた。
「価格は〈ギルドパス〉めいっぱい上げてもいいでしょう。〈口伝〉効果と酔いとノリでまともな金銭感覚してないはずです」
「いける気がしてきました……!」
「まだ安心するのは早すぎます。いかんせんセルデシア史上空前の業務形態です。都心に立地しているならいざ知らず、この立地ですからね。まずは移民に"〆のラーメン"という選択肢を知らせることが先決でしょう」
「やっと宣伝の部分に入る訳ですね」
「はい。ターゲットは〈ジョージ=タカノ〉エリアの移民。まずはチラシを刷って一軒一軒ポティングをしましょう。彼らの住所はすべて調べ上げました」
「地味ですが有効ですね。でもチラシを作るお金なんてうちには……」
「ご心配なく。心強い助っ人がいますから」
クモリはヤマセの肩を叩いた。
「なんですか?」
「ヤマセ殿のサブ職は〈筆写師〉だったよな。刷れるだろ?百八十三人分」
「人を印刷機みたいに扱わないでください」
「レインの宿泊所兼勤務先を潰したいのか?」
クモリはヤマセをジッと見つめた。
「仕方ありませんね。費用はちゃんと負担してくださいよ」
「そんな予算は無い」
「タダ働き」
「宣伝策はもうひとつあります。多くの移民は夜、飲み屋街に行きます。特にここに住む移民のほとんどが〈ギオン花街〉で呑むということが分かっています」
「そんなのどうやって調べたんですか……怖い……」
店長は引いた目線をクモリに注いだ。
「私は元々調査が専門でしたから……つまり移民狙いで〈ギオン花街〉に屋台を出店しましょうという話です。屋台なら私が持ってますし、場所の許可もとれます。客寄せもお任せください。なにせこちらには……」
「いやな予感」
ヤマセがぼやく。
「タイヨウという〈アイドル〉がおりますので、彼女にライブを開いてもらいましょう」
「ダメです」
ヤマセは即答した。
「なんで」
「人のアイドルを無料の広告塔みたいに扱わないでください。どうせタダでやらせるんでしょう?」
「御所の時はタダだったじゃないか」
「あれは斎宮様や貴族たちとのコネができるから特別にやったんですよ。今回は何のメリットもありません。プロデューサーとして断ります。第一〈ギオン花街〉なんて冒険者たくさんいるでしょう?タイヨウさん嫌がりますよ」
「レインのためだ。頼む」
「…………」
「ライブは明日の夜九時だ。詳細は後で伝える」
そう言ってクモリは店長の方に視線を移した。
「以上が私が提案する策です」
「助かりました……。さすが〈執政公爵家〉。ではとりあえず夜まで待ちますね」
「夜営業に特化するといっても、それ以外の時間なにもするなということではありませんからね。ちゃんと昼・夕も営業してください。出前も始めるべきでしょう。あと、なによりもまずーー」
「まず」
「掃除してください」
クモリは床を何回か踏んで、ニチャニチャという音を立てた。
◆3◆
ヤマセはレインとともに〈天下王将〉の二階に上がった。
簡易宿泊所に改装されており、ドアが五つならんでいた。
ヤマセは真ん中のドアまで行く。
そこにはイタチ・タイヨウ・レインと書かれた表札がかかっていた。
彼はノックもせずにドアをあけた。
「ちょ、ちょっと!ノックくらいしなさいよ!」
「よかった。ふつうの反応で安心しました。タイヨウさんにも女の子らしいところがあるんですね」
「どういう意味!?」
「クモリさんと打ち合わせしてきました」
「え、なにライブでもするの」
「明日することになったぞ!」
レインが笑顔で言う。
「明日!?どうしていつもそんな急なの!?場所は?」
「〈ギオン花街〉とか言ってたな」
「うげええええ!冒険者いっぱいいるところじゃん!」
「もっと女の子らしい反応してください」
ヤマセが忠告するとタイヨウはシュンとうなだれた。
「安心してくださいタイヨウさん。明日は行かなくて大丈夫です」
「は?」
「ボクによい解決策があります。なので絶対に会場には行かないでください」




