第6話 "村人R" は "試験" を受けた!
「おっ!見えてきたな」
草原の奥に、石でできた大きな門が見えてきた。門の前にはオヤジさんくらい大きな屈強な男達が立っていた。
「止まれ!通行証を見せてもらおう!」
ライオット達はそれぞれ何かの証明証のようなものを出した。
「冒険者か…通ってよし!次!」
「レッシュ!噴水の近くで待っとくぜ!」
ライオットが門の向こうから大きな声で話す。
俺の番だ。
「えーっと……俺、田舎住みで…」
「それはつまり身分を証明するものがないということか?」
屈強な男がぐいっと顔を近づける。
(こ、怖ぇぇ)
レオンは震えながら話す。
「は…はい…」
「ならばそうだとさっさと言え!とりあえず、前科がないか『鑑定』してから仮身分証を作ってやる!さっさと来い!」
レオンは言われるがままに着いていく。
⦅案外面倒見のいいおっさんだな⦆
(ほ、本当だな…ってか不味くないか。『鑑定』なんてされたら『腐食』がバレるんじゃ)
⦅大丈夫だと思うぜ⦆
(なんでそう言い切れるんだよ)
⦅堂々としとけって、もしダメだった時は逃げちまえばいいだろ?⦆
(そういう問題じゃ…)
男が立ち止まる。
「着いたぞ、ここで『鑑定』させてもらう、この水晶に手を置け」
レオンは息を呑みながら、水晶に手を置く。
すると水晶は光り輝きながら、文字を浮かび上がらせる。
⚪︎名前:レッシュ
⚪︎スキル
『肉体操作』、『風魔法』、『農業Lv.3』
⚪︎職業
村人
⚪︎前科
なし
「うむ、問題ないな。レーデンへようこそ、仮身分証を渡しておく。どこかで身分証を作ってもらうといい。」
「ありがとうございます!」
レオンは噴水の近くまで案内してもらい。ライオット達と合流した。
「良かったぜ、もしかしたら悪いやつだったのかもってちょっと心配しちゃったよ」
「あはは…」
レオンは苦笑いをする。
「よし、それじゃ冒険者登録しに行こうぜ!」
「それより先に身分証作らなくちゃでしょ!」
クローディアがライオットを叱る。
「別にギルドでも作れるだろ、次いでにクエストの報告もすれば一石二鳥だろ。行こうぜレッシュ!」
ライオットが走り出す。
「あ、ちょっと!本当にもう…」
クローディアとカノンもその後に続いて走り出す。
レオンもその後ろを追いかけながらフレッシュが語りかける。
⦅なんとかなったな坊主⦆
(何とかって、どうやったんだよ)
⦅簡単だ。偽造した。⦆
(…は?)
⦅坊主が触る瞬間に俺がいい感じに触って名前とかスキルとかを誤魔化した⦆
(いい感じってなんだよ…)
⦅成功したんだから万事OKよ⦆
ライオットが足を止める。
「着いたぜ!ここがギルドだ!」
そこは周りの建物と比べても一際大きな建物だった。
中は活気にあふれており、さまざまな人が行き交っている。
「おぉっ!」
レオンは夢にまで見た冒険者ギルドを見て目を輝かせていた。(今は糸目だけど…)
「レッシュこっちだ!」
ライオットが呼びかける。
「俺たちはクエストの報告しとくからここで登録しておいてくれ!」
こうしてライオット達と一旦別れた。
「こんにちは、はじめて登録される方ですか?」
整った制服をきた受付嬢が優しい言葉でレオンに問いかける。
「はい、そうです。」
「わかりました、現在はランク測定試験がございますが、参加いたしますか?」
「ランク測定試験?」
「はい、昨今の冒険者の増加につきましては実力が足りないのに難易度の高い任務を選ぼうとするバ……方が一定数いらっしゃいますので、基準値以下の方を間引こうというものです。」
なるほど、確かに簡単に死なれてはギルド側も困るか…
「その試験、参加しないと冒険者にはなれないんですか?」
「いいえ、あくまで基準値に満たしているかを確認するための試験なので任意とさせて頂いています。どういたしますか?」
⦅なんかメリットあんのかそれ?⦆
(いや…ある。)
レオンはいつかの日のために何度も行った脳内シミュレーションから今回のケースの答えを導き出していた。
「参加します!」
「…!分かりました、そこの奥の部屋でお待ちください。」
⦅どういうことだ坊主?⦆
「いいから黙って見てな…」
レオンの顔は凄く渋い熟練の冒険者のような雰囲気を醸し出していた。
⦅何だその顔…⦆
しばらくすると扉が開いて、1人の不思議な剣を携えた黒髪の無精髭の生えたおっさんが入ってくる。
⦅ありゃ刀だな…珍しいモン持ってやがる⦆
(カタナ…?)
「あーっ………1人だけか…俺が今回の試験監督のマサヒロだ。シクヨロ〜」
「よ、よろしくお願いします。」
マサヒロが木刀を投げてくる。
「早速だが、今回はめんどくさいので実践形式にする。俺から15分以内に一本とれ、以上。」
「え、ちょっ…」
「はい、はじめぇ」
マサヒロが砂時計をひっくり返す。
(しょうがない…一瞬で終わらせる…)
レオンは足に力を込める。
『疾風怒濤』
地面が揺れる。レオンの持つ木刀は完全にマサヒロを捉えていた。レオンは木刀を力いっぱい横に振るう。
しかし、マサヒロは少し屈むだけでレオンの攻撃を避けてしまった。
「マジかよ…」
「どうした?そんなもんか?」
マサヒロが頭を掻きながら聞いてくる。
「舐めやがって…」
⦅相手にされてねーな⦆
「やってやる!」
レオンは何度も攻撃を仕掛ける。しかし、どれもマサヒロには当たらない。しかも、マサヒロはほとんど動いていない。砂時計の砂は無常にも減り続ける。
「はぁ…はぁ…」
レオンは息も絶え絶えになる。
「結局突っ込んでくるだけのワンパターンか?そんなんじゃ通用しない相手にはいつまでも勝てねぇぞ」
マサヒロが呆れたような口調で言う。
「そもそもなんでお前は冒険者になりたい?」
「なんでって…一番自由でカッコいいからに決まってんだろ。強い敵倒したり、困っている人助けたり、美味いもん腹一杯食ったり…それから…」
「浅っ」
「何だと?」
「だから浅ぇって言ったんだよ、お前みたいにカッコイイだのなんだの浅い理由でこの仕事始めるなめた奴らがたくさんいるからこっちも迷惑してんだ。くだらねぇごっこ遊びしに来たんなら死んじまえ、嫌なら帰りな。」
確かにマサヒロの言うことは事実だった。レオンは手を震わせる。
「ダメなのかよ…」
「あっ?なんだって?」
マサヒロがわざとらしく耳に手を添える。
「ダメなのかって聞いたんだよ!カッコいいって理由じゃダメか!?誰かを助けたいって気持ちじゃダメなのか?俺はそんな姿に憧れたから冒険者になるって決めたんだよ!俺の目指してる夢はテメェごときに指図されて諦められるようなモンじゃねぇ!」
レオンの怒りに呼応し、肉塊がレオンの足元を覆う。
レオンは深く構える。
『肉体疾走』
今度は地面が大きく揺れる。それでもマサヒロは一歩下がるだけで攻撃を避ける。
「まだまだぁ!」
レオンの足がさらに膨張する。地面が抉れ、速度はどんどん加速する。
「安直だな」
マサヒロは刀に手を添えた。
しかし刀は抜かず、構えたまま目をつぶった。
(なんだ…?でもこれが最初で最後のチャンスだ…)
砂時計の砂はあと15秒後には落ち切ってしまいそうだ。
(いける!当てられる!)
レオンはそのまま最高速度で突っ込んだ。
レオンがマサヒロに近づいたその瞬間、マサヒロの刀が振り抜かれる。
『一閃』
閃光の速度で刀が正面を切る。
「だから言ったろ、ワンパターンだと………!?」
マサヒロは驚愕した。目の前からレオンが消えていたからだ。
「そうだよな…ワンパターンは…いけねぇよなぁ!」
肉片が天井に張り付き、レオンを引っ張っていた。レオンはそのまま天井を全力で蹴る。
『肉体疾走』!!
次の瞬間、レオンの木刀がマサヒロの無防備な背中に叩き込まれ、マサヒロは地面に叩きつけられた。それとほぼ同時に砂時計の砂も落ち切る。
(やべ…思いっきり叩き込んじまった。)
レオンは少し心配する。
しかしマサヒロはすぐさま起き上がり、服についたホコリを叩いていた。
「あの俺…」
マサヒロは口を開いた。
「合格だ。」
Q.第4話で『肉塊疾走』だったのに、今回『肉体疾走』になってるのはなんで?
A.第4話はフレッシュがレオンの体をほぼ無理矢理に動かしたため主導権が『肉塊』、今回はレオンの怒りによって発動したため主導権は『肉体』。
という言い訳をしてますが、ただのミスです。
ただ、これからはどちらに主導権がある状態かで書き替えるかも…?




