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【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第3章 無人島に棲むリリス

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03-42 ヒカルの生還

「……ゲレナ=フェロって何?」

 利哉は不思議そうに眉毛をへの字に曲げる。


「堕天使という意味だけど、何のことかは僕も……」

 一翔は首をかしげる。


「マレソムディア島の逸話やヒカルの失踪事件が解決したと思った矢先、大きな謎が出て来てしまった……」

 うーん、と一翔は腕組みして唸る。


「――それにしても、一翔はフォーリン=クズハが階級を偽ってるってよくわかったな」

 どこで気づいたんだろう、と雅稀は脳裏に疑問符を浮かべる。


「雅稀と利哉が戦ってくれていた間に、クズハが残した日記を片っ端から読んだ。自分が強くなることに執着した内容だったけど、階級が上がったと書かれてなかった。実際に魔女が来ていたワンピースの袖口は黄階級(フラムクラス)を示す色だった。でも、塗りムラがあったから、ますます怪しいと思ったんだ」

 一翔は雅稀にクズハが残した日記を3冊差し出した。


 雅稀はそれを受け取り、1冊目をパラパラ読むと、確かに強くなりたいということばかり綴られていた。


「いやぁ、カズがいてくれなかったら勝てなかったどころか、オレたち死んでたよー」

 利哉は後ろに手をつき夜空を見上げる。魔女を倒した後の夜空は一段と美しく見える。


 一翔は左右に首を振り、

「僕が日記を調べていなかったら、何よりも君たちが魔女を弱らせてくれていなかったら、勝利に導けてなかったと思う」

 とあどけない笑みを見せた。


「俺たち3人、誰かが欠けていたら勝てなかったな」

 雅稀は笑うと、利哉も一翔もそれに便乗して爆笑した。


「無人島の恐怖から解放されたし、ヒカルも今頃宿舎に戻ったと思う。僕たちも帰ろう」

 一翔は立ち上がり、衣装についた砂を払う。


 雅稀と利哉はゆっくり立ったが、魔女との戦いと心眼専心の反動でよろけてしまった。


「2人とも!」

 一翔は彼らの腕を掴んで引っ張り、左に雅稀、右に利哉の肩に手を回した。


「ごめん。助かったよ」

 雅稀は疲れ切った笑みをこぼし、一翔の右肩に右手を置く。


「全員に、ありがとう、だな」

 利哉は一翔の肩を組み、2人の顔を向ける。


「良いこと言うなぁ! みんなに、ありがとう!」

 雅稀は胸を張って高らかに感謝の気持ちを述べた。


「僕からも、ありがとう」

 一翔は凜とした表情を雅稀と利哉に見せ、彼らは肩を組みながら3人4脚で宿舎を目指して歩いた。


  ――***――


 明け方の6時。夜空に散りばめられた星が輝き続ける中、教員と魔法戦士学科の学生は宿舎前に集まっていた。


 教員用の宿舎から、ヒカルを乗せた加担を持ったトスカとアルファードが現れる。彼らに付き添っていたルシフェルとラヴィン姉妹も集合場所へ向かう。


 学生らは仰向けに眠っているヒカルを目にし、言葉を失った。


 トスカとアルファードが加担を地面に置くと、そこにマルス学科長が立っていた。


「君たち、力武ヒカルをよく見つけてくれた。感謝する」

 学科長はトスカら5人の学生にお礼をする。


「夜中に捜しに行った身であるにもかかわらず、恐縮です」

 トスカは会釈する。


 ルシフェルはキョロキョロと周りを眺めていると、ミズナラの山地帯の境界から3人の姿を捉えた。

 彼は3人を指さした。


「おい、帰ってきたぞ!」

 ルシフェルの声に合わせて一斉に東を向く。3人の男子学生が肩を組んでこちらへ向かっている。中央にいる学生は元気そうだが、両端の学生は足を引きずっている。


 アルファードは目を凝らすと、フォーリン=クズハと名乗る魔女と戦いに行った利哉と一翔、雅稀の3人だった。

 彼らがアルファードの近くへ着くと、地面に腰を下ろした。


「良かった! 無事だったか」

 アルファードは声をかけると、一翔は顔を上げた。


「まあ、何とか。魔女は倒してこの世からいなくなった。それより、ヒカルは……?」

「あの後、救護室へ連れてったけど、目を覚まさなくてよ」

 ルシフェルはヒカルを一目見る。


「そう……」

 一翔が声を落とした瞬間、ヒカルは目覚めて上体を起こし、左右へ首を振る。


「ヒカル……! 良かった! 起きてくれて……!」

 サラは彼女の肩をしっかり掴む。ゼロワン大会で元気だったヒカルとは違い、頬はこけ、真っ青な顔色をしている。それでも、大事な親友であることには変わりない。


「目覚めてくれたのね」

 サラの隣にリサがしゃがみ、ヒカルに話しかける。


 ヒカルは周辺を見渡していると、小さく口を開けた。

「ここにみんないるけど、これから実習をするんじゃないの?」

 彼女のか細い声に、周辺にいる人は驚異の目を張った。


「実習は昨日で終わったよ。今からみんなでGFP学院へ帰るのよ」

 しっかりしてよ、と言わんばかりにサラは彼女の体を前後に揺らす。


「昨日はダーツ大会をしたから、今日が3日目のはずじゃない?」

「3日目――って何言ってるのよ? 今日は5日目、最終日だよ。だからみんなここに集まってるの」

 サラは声を張るが、ヒカルは状況を飲み込めていない。


「もしや、魔女にさらわれて記憶を消されたんじゃ……」

 リサの怖じ気の表情を見て、学生は再びがやがやと騒ぎ始めた。


「いや、ヒカルは魔女に連れ去られていた間、意識を失っていた。だから、覚えていないのも無理はない」

 一翔がそう言うと、リサは納得したように数回頷いた。


 マルス学科長は口の端に手を当て、遠くまで声が聞こえるように言った。

「静かに!」


 喋り声が収まったことを目と耳で確認すると、学科長の近くにいる9人の学生に体を向けた。


「君たち、力武ヒカルを見つけ、無事に戻ってきてくれたことに感謝の意を示す」

 学科長は雅稀と利哉、一翔の視線を合わせ、

「無人島に棲んでいた魔女を仕留めてくれたのかね?」

 と尋ねる。


「ああ、はい……」

 一翔は突然の質問に困惑しながら答えた。


「僕は動けますけど、2人が……」

 彼は雅稀と利哉の容体を気にかけると、マルス学科長の手は彼らの肩に触れ、無言で回復魔術を唱えた。

 学科長の手から薄緑の光が雅稀と利哉の全身に行き渡り、傷を癒やしていく。


 2人の学生の傷が完全に癒えたことを確認し終えると、学科長は「これで大丈夫だ」と告げた。


 雅稀と利哉は自分の手のひらを見つめ、しばらく驚いていたが、学科長の話は終わっていなかった。


「力武ヒカルの捜索に尽力し、何より長年棲んでいたと言われていた魔女を仕留めてくれた、合計8人の学生に感謝状を贈る!」

 マルス学科長は指を鳴らすと、8枚の上質紙が現れた。


「では、新條くん。こちらへ」

 雅稀は学科長の目前に立った。


「感謝状、新條雅稀殿。貴殿は力武ヒカルの行方を突き止め、マレソムディア島に棲んでいた魔女を倒したことを称し、感謝状を贈る。フェリウル歴8880年1月15日。グリフォンパーツ学院大学魔法戦士学科長シューロ・トリフェ・マルス」

 学科長は感謝状を雅稀へ差し出し、彼は両手でそれを受け取り、頭を下げた。


 無人島実習に同行した先生方はもちろん、宿舎前に集っている学生も、ヒカルを捜しに行った同志も拍手で称えた。


 雅稀に続いて利哉と一翔も同じ内容の感謝状が贈られた。

 続いて、トスカとルシフェル、アルファード、ラヴィン姉妹はヒカルの行方を突き止めたこと、看病したことに感謝状が贈られた。


 サラが最後に感謝状を受け取った後、浮かない顔をしていたのを、マルス学科長は見逃さなかった。

「力武の容体は安静かつ食事を摂っていれば回復する」

 サラは学科長にお辞儀をした。


 パンパンと学科長は両手を叩き、学生をこちらに注目させた。


「全員揃っておるな。今からGFP学院へ戻る。到着時刻は天候によるが、19時頃を予定しておる。先頭から順に船へ乗ること」

 では、と学科長が歩き始めると、彼に続いて船を目指した。

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