03-40 勝利に賭けた3色の光線
「うっ……あたしの綺麗な顔に何てことを……!」
クズハは手で押さえた顔面から鋭い眼光を覗かせる。
「君の顔は戦いで傷だらけな上に、氷のように血色のない顔。綺麗だとは思えない」
一翔は単刀直入に言った。
「で、君は僕の闇属性の攻撃を受け止められなかった。精神を集中させた状態の正式名称も知らない。黄階級ではないね」
「何よ! いつまであたしの階級を疑うつもり!?」
一翔の冷ややかな視線に対抗するようにクズハは声を荒げる。
「まぁ、一旦落ち着いて、精神を集中させた状態の正式名称を答えてみな」
クズハの怒りの眼差しを浴びながらも、一翔は余裕綽々としている。
「それを答えて何になんのよ!! ――っ」
クズハは紫紺の目を張り、威張った途端、魔女の全身を覆っていたオーラが消滅した。
心眼専心の反動を受け、クズハは地面に崩れ下り、血反吐を吐く。
「心眼専心と言うんだ。黄階級以上の魔法戦士なら全員知っているのに、君は答えられなかった」
一翔の言葉はクズハの耳に届いていなかったが、クズハは剣を掴んでゆっくり立ち上がった。
「黄階級だって言い張ってた割には心眼専心の言葉を知らず、僕の攻撃もまともに受けられなかった」
「う……うるさい……」
クズハは咳き込みながら唇から流れる血を袖で拭う。
「あれだけ大口を叩いていたのに、こんな惨めな目に遭って恥ずかしくないのか?」
一翔は目を細めて威圧する。
(このままじゃ……まずい!)
雅稀は木陰から飛び出し、一翔へ駆け寄る。
「あんまりあいつを怒らせると、雷のステージを作るぞ」
雅稀は一翔の耳元でささやくと、一翔は右手をひらひらと振った。
雅稀は怪訝そうに顔を歪ませると、一翔は
「心配無用。クズハにそんな体力は残ってない」
と呟いた。
目前にクズハが心眼専心の反動で苦しんでいる。その状態で空から無数の稲妻を落とせるはずがない。
雅稀もその反動に苛まれた時、精一杯戦えるかと言われたら不可能だ。そう考えれば一翔の言葉に納得できた。
「あたしは……あたしは……黄階級よ!!」
クズハは深く呼吸をしながら叫ぶ。
やれやれと一翔は肩をすくめ、雅稀は口をつぐんで突っ立っている。
「そこまで言うなら、僕らの攻撃を受け止めてみせてよ」
一翔は斜め後ろに立っている雅稀と木陰でたたずんでいる利哉に、自分の隣に来るように手招きした。
彼の左側に利哉、右側に雅稀が並ぶ。彼らは右足を前に出し、切先をクズハに振りかざす。
「良いか、僕の合図に合わせて光線を放って仕留めよう」
一翔は小声で提案し、2人は戸惑いながらも首肯した。
「黄階級は自分と異なる属性に対する基本的な防御魔術を使用できる証。もし君がそうだと言うならば、証明してくれ!」
一翔の力強い眼差しと共に、切先が紫色に光る。
いくよ、と彼は雅稀と利哉に合図を送り、彼らは切先に魔力を注ぎ始めた。
「「「光線!!」」」
彼らは息を合わせて切先から光の筋を放った。
赤橙と紫、青色の光線はらせん状に絡み、クズハの心臓を狙って突き進む。
「絶対、何が何でも止めてみせる……!」
クズハは自分に言い聞かせるように、胸部の前に剣を横に構える。
「抗光線・光!」
切先から薄黄色の光の衣が剣身を覆う。
雅稀らが放った光線がクズハの抗光線に激突した。
バチバチバチッ! と赤、青、紫、そして黄色の火花が接触面で四方八方に飛び散る。
(こいつしぶといな……)と少し顔をしかめる雅稀。
(これで勝てるなら、全力を尽くすのみ!)と勝利への道に期待を馳せる利哉。
「ん……ぐ……ぐっ……」
クズハは必死に3本の光線を防御するが――
ピキンとガラスの割れたような音が響いた。魔女の防御魔術に亀裂の入った音だ。
クズハの顔面から汗が噴き出るが、諦めずに防御し続ける。
「とどめだぁーーっ!!」
一翔は緑に光る双眸を大きく開け、光線にさらなる魔力を加え、雅稀と利哉も最後の力を振り絞る。
3色の光線はクズハの全身より一回り大きなサイズに肥大化し、鉄槌の如くクズハの抗光線を叩き割っていく。
バキン、バキンと無数のヒビが入り、最終的にバリーン! とガラスが粉砕したような音が戦場にこだまする。
「いやああああああああああああっ!」
フォーリン=クズハの断末魔の叫びを最後に、雅稀らの光線が全身に直撃した。
「「「いけぇーーっ!!」」」
雅稀らは勝利を確信しながらも油断せず、持っている力を光線に込めた。




