敵
領主の家令が現れ、
少年たちを執務室から連れ出す。
男女で別々の部屋をあてがわれ、
半ば軟禁されるように
少年たちは部屋に閉じ込められた。
少年の顔は青白く
強い葛藤が滲む。
詐欺師は少年に
何も声を掛けなかった。
供された粗末な食事にさえ手を付けず、
少年は深い懊悩に沈む。
詐欺師は相変わらず何も言わなかったが、
必ず少年を視界に捉える場所にいた。
時は淡々と刻まれ、
日は沈み、
夜が来る。
ベッドの端に腰かけ、
膝の上に肘を置き、
前屈みになってうつむき、
少年はうめくように
言葉を搾りだした。
「……僕の敵は、誰だ?」
詐欺師は椅子を少年の前に運び、
向かい合うように座ると、
安心させるように笑いかける。
「予言の勇者なんて言われて、
その気になっちまったかい?
だが、
オレ達はそんないいモンじゃないだろう?
使命だの義務だの、
そんな理由で戦ってきたんじゃないだろう?
オレ達はいつだって、
好きにやってきただけだろう?」
少年は顔を上げる。
詐欺師は真剣な表情で
少年の瞳を覗き込んだ。
「自分の敵は自分で決めろ。
どんな結論になったとしても、
オレはそれを支持する」
少年の目が
大きく見開かれる。
そしてその顔は、
徐々に迷いから
決意へと変わっていった。
詐欺師はにやりと笑みを浮かべる。
少年は目を閉じ、
目を開けて、
詐欺師にうなずきを返した。




