表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/25

第二十三羽:メグルの決断

少女の出した結論

 出発の前夜。あの日のようにリタと二人っきりで空を眺める。


「早いものだね。もう出発だよ。もう少しくらいゆっくりしたかったな」

「延ばせないの?」

「フォウをサクラの父親に預けているからね。そろそろ戻って様子も見たいし。小鳥の内は一緒に旅が出来たけど、さすがに大きくなって目立ってきたから。父親の居る冬の地域なら色が変わる事もない。フォウも安心して暮らせる」

「そうだね……」


 星は今日もキラキラと夜空に輝く。あの日のように。


「リタ、返事……しても良い……?」

「あぁ。何となく分かっているけどね」


 頷く。


「ごめんなさい。一緒には行けない。私にはやりたいこと、やらなきゃいけないことがあるの……! だから、せっかくだけど……」


 リタも頷く。


「うん。だろうと思った。そのやりたいこと、見守らせて貰うよ」


 一緒に旅に出る。本当は憧れる。ずっと願った事だもん。でも、それはいつでも叶う。今しか出来ない事は、待ってはくれない。


「私ね、この町が好き。今はまだ助けられてばかりだけど、その分みんなに恩返しがしたい。貰った恩が多過ぎて返せるか分からないけど、でもやるよ!」

「それは……また途方もない目標だね。私なんて恩返しどころか仇で返しているのに」


 それはきちんと改善して下さい……


「ちゃんと連絡くれたり、定期的に帰って来るだけでだいぶ違うよ。リタの場合、まず心配させないこと!」

「肝に命じておく。しかしフラれたなぁ。この町が相手では無理も無いけどね」

「行かない訳じゃないよ? もう少し大きくなって、一人前になったら考える。まだ子供だし、みんなに心配させるだけだもん」


 リタは笑う。


「待っているよ。今度はメグルから誘ってくれるのを待つことにしよう」

「分かった。それまで無茶しないでね?」

「承知した……」


 あの日のように輝く星を眺め、あの日とは違った気持でリタを送りだす。もう、不安は無いよ。きっと戻って来ると信じているから。





 翌朝、日が昇る頃にリタとサクラさんは町を出た。


 見送る時、サクラさんにフォウの羽を返そうと思ったけれど、サクラさんは受け取らずにこう言ってくれた。


「それはあなたが持っていて。いつか、フォウに会ってあげてね? 約束!」


 私は頷く。また一つ、大事な繋がりが出来た。



 それからいつも通りに準備を進め、いつも通りにお店を開き、いつも通りに時間は流れて行った。



 開店してしばらく。お客さんはまだぽつぽつとしか居ない。 

 そっと控えめにドアが開き、一瞬、驚いた表情を浮かべてニックが入って来た。


「……お前、行かなかったのか?」

「ニック、おはよう。珍しいね、こんな時間に」

「いや、まぁ……別に良いだろ……?」


 ニックはいつもの席に座る。うん、何だか安心する……


「ごめんね、確かめに来てくれたんでしょ? あの後会わなかったもんね」

「忙しかったんだよ……」

「アトラスさんは来てたよ?」

「っ!? あ、あいつとは担当が違うから! あっちは暇なんだよ!」


 慌てるニックに思わず笑ってしまう。


「……なんだよ、ったく」

「ごめん、ごめん。でも、ちょうど良かった。話があるんだよ」 


 ニックは険しい顔をする。


「またあいつに妙な物でも押し付けられたか?」

「違うよ。私ね、好きな人が居るんだ」


 ニックはポカーンと口を開けたまま硬直した。


「その人が側に居るのが当然で、今まで気付かないかったんだけど。いつも助けてくれて、励ましてくれて、時には叱ってくれて。たぶん、一番支えてくれてる」

「ま、まさか……」

「うん……」


 やっぱり、恥ずかしいなぁ……


「いやいや! 何考えてんだよ! じいさんにはばあさんが居るだろ!? て言うか、年齢的にも無理だって!」


 お客さんが全員机に突っ伏した。ニック、確かにおじいさんはいつも側に居るけどね……


「ニック、そろそろ仕事行きなよ。工場長やアトラスさんに怒られるよ」

「え、急に冷たくね?」

「知らないもん」

「意味分かんねぇよ!?」


 いつものやり取り。今はまだこれでいいか。焦らず、大事にこの気持ちを育てて行こう。


「またお昼に来てね。待ってる」

「……言われなくても来るよ」

「うん! ありがとう!」


 ニックはぶつぶつと呟きながら仕事へと向かった。誤解だけは解かなくては……



「さぁ、頑張ろう!」


 恩返しにお仕事に、そしてこの気持ち(恋愛)に、やりたい事は沢山ある。

 時間は掛かるかもしれない。苦しい事もあるかもしれない。


 でも、この町でなら大丈夫。


 カランとドアが開き、ベルが鳴る。


「いらっしゃいませ! レスト・パーチへようこそ!」

次回予告

エピローグ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ