ハザマ様再び
あれから秀青さんと大学内でお茶をしたり、一緒にランチを食べたりと、少しずつ距離を縮めて仲良くなっていったある日のこと。母を通じて、本家に来るよう通達があった。
(なにごと……?)
私を呼び出したのはお役目様ではなく、ハザマ様の方だった。あの方の出自を知ってしまったので、口外しないよう念を押されるのではないかと内心ドキドキする。
今度はすっきりとした茶室の様な客間へ案内された。
「ご無沙汰しております」
お辞儀をして頭を下げたまま、緊張で鼓動を速めつつ、ハザマ様が口を開くのを待った。
「呼び出してすまない。実は、事前に知らせておいた方が良いと思い来てもらった」
どこか申し訳なさそうなハザマ様の声が響く。
「秀青と会うのは、大学内では控えてほしい。人目に触れないよう隠れて会うか、できることなら付き合っていないと周囲に示してほしいんだ」
(な、何故に!? ていうか秀青さんと出会ったことや、仲が良いことまでバレてる! ご自身と間違われると迷惑だから?)
思考を巡らせていると、
「……そうではない。女性の嫉妬が原因で、六、七人の生き霊が君に憑いているんだ。祓おうにも死霊とは訳が違う。生きている人間のエネルギーゆえ、一度祓っても次々と憑いてキリがない」
――心、読まれちゃってるし!
困惑してバッと顔を上げると、ハザマ様は至極冷静な様子で言葉を続けた。
「あれは誰にでも愛想が良いから、皆、自分に気があると勘違いしてしまう。君と秀青が親しくしているところを見かけると、嫉妬の念を抱いてしまうようだ」
(人たらしだもんなぁ、秀青さんは……)
「そんなことになっていたなんて……」
あまりの事態に、私は思わず呟いた。
「それと、この封書を秀青に渡しておいてほしい」
差し出されたのは、少し厚みのあるしっかり封印された封書だった。
「秀青の方も、君のことが気になっているようだ。私と間違えられた際、私との関係をきちんと説明してくれたのは君にだけだったからね」
「えっ……!」
思わぬ言葉に、顔が一気に熱くなるのが分かった。
(この方には、何ひとつ隠し事ができない……!)
ほかにも色々と聞いてみたいことはあったが、これ以上深く踏み込むのも失礼かと思い、
「お気遣いいただき、ありがとうございました。大学では会わないよう気をつけます。それでは……」
お暇の挨拶をして立ち去ろうとすると、
「質問があるのだろう? 聞きたいことがあれば、どうぞ」
(えぇ!? いいの!? でも、こんな機会めったにないし……せっかくだから!)
好奇心を抑えきれなくなった私は、そのままハザマ様と話し込んでしまうのだった。




