君の名は――あの世とこの世の狭間
「まあ、綺麗に治ったわね。よかったわ……さすがはお役目様ね」
私の肌を撫でる母の手から、安堵の温もりが伝わってくる。シーランの件で頭がいっぱいになり、本当のことを説明しそびれていたのを思い出した。
「あのね、お母さん。今回はお役目様じゃなくて……ハザマ様という方に視てもらったの」
正直に打ち明けると、母の手がぴたりと止まり、心底驚いたような顔をした。
「あら……そうなの? あの方は、お話しになられたの?」
「うん。とても澱みなくお話をされていたよ」
「まあ……あの方がねぇ……」
言葉を濁しながら、しみじみと感慨にふける母。その様子を見て、ずっと胸に引っかかっていた疑問を口にしてみた。
「ハザマ様って、少し変わったお名前よね」
「ええ。あれは本名じゃなくてね。『あの世とこの世の狭間に存在する人』という意味なのよ。お役目様と同じで、立場を表す名前なの」
母は少し首をかしげ、言葉を継いだ。
「今のお役目様の後を継がれる方なのかもしれないわね」
立場が上がるにつれて名が変わる習わしなのだろうか。……だとしたら、ハザマ様の本名は何というのだろう。気になって母にも尋ねてはみたものの、やはり母も知らないようだった。
あの端正な姿と、低く通ったお声が忘れられない。
思い出すだけで頬が熱くなる。私、もしかして一目惚れしたのかも……?
今度お会いしたときにはお名前を尋ねてみたい——そう思いはしたものの、あの独特の威厳を思い返すと、とても面と向かって聞ける気はしなかった。




