霊視
ハザマ様は私を一切見ようとせず、自身の頭の中に広がる何かを凝視しているようだった。
人が記憶を掘り起こすときにふと視線を泳がせるように、その瞳は右斜め上を虚ろになぞっている。
やがて沈黙を破り、ハザマ様がおもむろに口を開いた。
「……最近、海外からアクセサリーを買わなかった? 鉛が入っている。湿疹の直接的なきっかけはそれだ。ただ、ここまで炎症が長引いているのは金属のせいじゃない。……処方された薬の中に、塗ると油絵の具みたいに白く濁る軟膏があるだろう。あれが君の体に合っていない。普通の人にはよく効く薬なんだけどね」
その言葉に、背筋がすっと冷たくなった。
思い当たる節がありすぎるのだ。少し前に「シーラン」という中国の激安通販サイトで、あまりの安さに目を奪われ、ピアスとネックレス、ブレスレットをまとめ買いしていた。そして、皮膚科で出されたあの独特な質感の薬。
「ステロイドと一緒に貰った……亜鉛華軟膏、でしょうか……?」
恐る恐る尋ねると、ハザマ様は視線を右上に固定したまま、静かに頷いた。
「その薬だね。それを塗るのをやめて、少し様子を見てごらん」
何か特別な祈祷を求められるわけでも、高い壺を買わされるわけでもない。ただ「やめる」だけなら、私に何の負担もない。私は半信半疑のまま深く頭を下げ、ハザマ様の元を辞した。
——それから、一週間後。
あれほど酷かった湿疹は嘘のように引き、肌は完全に元の状態に戻っていた。
劇的な治癒にも驚いたが、何より恐ろしかったのはハザマ様の見立ての正確さと、あのアクセサリーの正体だ。
後日ネットニュースを開いた私の目に、「シーラン」のアクセサリーから基準値を遥かに超える重金属が検出され、大規模な回収騒ぎになっているという記事が飛び込んできた。
あの時、ハザマ様の虚ろな瞳が見ていたのは……一体どんな世界だったのだろうか。




