↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/38

ハザマ様

ある日、皮膚に原因不明の赤い発疹が現れた。

医師から処方されたステロイドをいくら塗っても、皮膚の奥で火がくすぶるような熱感と痒みは一向に治まらない。 入浴のたびに、掻き傷にお湯がしみて激痛が走った。


沖縄には「医者半分、ユタ半分」という言葉があるらしい。私の親戚筋でも現代医学が匙を投げたときは、本家の巫女である「お役目様」の託宣(せんたく)に頼るのが暗黙の決まりだった。


東本願寺を縮小したかのような、純日本風の本家の門を潜る。私はインターホン越しに声を張った。


「分家の初音です。お役目様に御目通りをお願いしたく、ご連絡差し上げました」


執事に導かれ、神棚が祀られている部屋へ通される。畳の擦れる音だけが響く静寂の中、執事が襖越しに声を落とした。


「ハザマ様、分家の初音様がお見えです」


ハザマ? 聞き覚えのない名に首をかしげながら襖をくぐる。そこにいたのは、見慣れたお役目様ではなかった。

浅葱色の袴を身につけ、巫覡(ふげき)の正装をして上座に正座していたのは、あの「福虫(ふくむし)」と呼ばれていた青年だったのだ。

挿絵(By みてみん)

背筋をピンと伸ばしたその青年は、すらりとしたシルエットと非常に端正な容貌をしており、私は思わずはっと息を呑んでしまった。


「お役目様は急用にて不在です。代わりに私が視るよう、仰せつかっております」


少しの滞りもない、静謐で落ち着いた声だった。

(……福虫と呼ばれていたあの人は、ハザマという名前だったのか。というか、この人に相談して本当に大丈夫なの?)


胸の奥がざわりと波立った、まさにその瞬間。

彼は私の内心の動揺を見透かしたようにふっと口元を緩め、静かに言った。


「お役目様ほどではありませんが……一応、解りますよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。