沙藤美麗という女
私が大学のロッカー室に荷物の整理に行き、
2階のアトリエの窓から風景をぼんやり眺めていると沙藤さんが通りかかった。
「沙藤さん」と声をかけてみると、彼女は少し驚いたように見上げたが、「今、そっち行くから」と言って、わざわざコーヒーを買ってアトリエまで上がってきてくれた。
「なんか、スッキリした顔してるじゃない。立ち直ったの?」
「うん。あの時救急車呼んでくれたの沙藤さんよね。ありがとう。私、何も出来なくって……」
「……予感してたの。最悪の事態を。だからすぐに救急車を呼べたのよ」
「沙藤さんって、勘が鋭いよね。実はね、私達口論した時あったでしょ?後からわかったんだけど。沙藤さんの言う事ほぼ当たってたの。」
「月島さんが意図的に他学科の生徒を選んで肉体関係持つって話?」
「秀青さんも、それを認めてたの。自分には自業自得のつけが廻ってくるから誰も責めないようにって。」
「…………そう。」
「沙藤さんって、何か霊感みたいなのあるの?いつも鋭いし、私よりも何かわかってそう。」
「いわゆる霊能者ってほどじゃないんだけどね。なんとなく感じる程度の、ちょっとした勘の良さよ」
「事情を知ってる室生家の人がね、安納先輩に起訴猶予がつくように色々手を回してくれたみたい。安納先輩も別の意味で被害者だったし……」私がそこまで言うと、沙藤さんは言葉を遮った
「逆ね。最初遊ばれてたのは、室生さんよ。」
「私の勘だと、月島さんは最初、安納 栞のことが好きだったのよ。でも、彼女の穏やかで女らしい優しさの仮面が剥がれてきた。その本当の性格が見えて、月島さんは嫌になったのね」
沙藤さんは言葉を切ると、私をじっと見つめた。
「貴女は性格も控えめで、相手の自由を尊重する人。決して追い縋らない。だから月島さんは『安全な生徒だ』と感じて、近づいてそれなりに遊ぼうと思ってた……でも、逆に本気になってしまった。それが私の見立てよ」
「…………」
秀青さんから聞いた言葉、そのままだった。 霊感を持っている人というのは、世間には結構多いのだろうか。
遠くを見つめながら
「今となっては、どうでも良いことだけどね。」そう言うと沙藤さんはふっと笑い、こう言った。
「で、貴女の顔を見て気づいたんだけど……新しい男、できたんでしょ? その晴れやかな顔を見ればわかるわ」
……隠しごと出来ない人が、また一人増えちゃった……




