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無彩色の世界
私はここ数日、記憶を無くしていた。
むしろその方が心が楽だ。
記憶がないのは防衛機能で、心を守っているからだろう。
霞がかった意識がようやく鮮明になった時、秀青さんの告別式が既に終わっていた。涙すらでなくて、心が沈黙してフリーズしている。
色彩学において、灰色のことを「無彩色」と呼ぶ。 まさに今、私の目の前に広がる世界から、すべての色が奪い去られてしまった。
結局、大学は休学し留年することを選んだ。
2ヶ月ぐらい経った時にようやく外に出られるようになった。ガリガリに痩せて、食事を取ろうにも、「食べる作業」をしているような感じ。
そんなある日
やるせない思いがもたげてきた。
“ 透青様はこうなる事を予知していたのではないか?”
私が助けを求めた時、秀青さんが直ぐに来てくれたのは、予め知らされていて、見守ってくれていたからだろうと思う。
彼の死は何故阻止してくれなかったのか?
自業自得だからだろうか?
ふと、透青様に言われた言葉を思いだした。
『いずれ然るべき形に収まる。私を信じ、何が起きても動揺しないでほしい』
然るべき形ってこれ?
酷すぎる!
透青様が何を考えているか知りたい。
その思いがかろうじて私を支えていた。




