不幸を呼ぶ女の勘
沙藤さんと並んで歩きながら、取り留めのない話をした。
「月島さんは、あのバールで誰かを……男を撃退したんだと思う。相手が女性ならバールなんて使わなくても何とかなるじゃない?」
ドキッとした。この子鋭い。
「以前、私が月島さんに少しちょっかいを出したことがあってね。それを見た安納栞が裏で嫌がらせをして、私の作品をめちゃくちゃにしているのを目撃しちゃったの。誰にも言わなかったけど……立場が逆だったら、私も似たようなことやっちゃうかもしれないし」
(意外にサバサバしてる……)
「あなたも気をつけた方が良いわよ?もっと酷い事起きるかも。」
(この子推理力あるなあ。)
色々と話してから、安納先輩の前から連れ出してくれたお礼を伝えた。
***
その日の夜、アトリエで作業をしていると、安納先輩がチェーンソーを持ちながら近づいてくる。
やばい! 本能的に感じた。
彼女は一旦、床にチェーンソーを置くと、スターターロープを何度も勢いよく引っ張り始めた。激しい爆音とともに排気ガスの匂いが立ち込め、エンジンが始動する。
私は弾かれたように教室の外へダッシュした。
「誰か! 助けて!!」
暗い廊下に向かって叫びながら走ると、前方から秀青さんが駆けつけてくれた。やっぱり、陰で見守ってくれていたんだ。
ブォン、と咆哮を上げるチェーンソーを掲げ、安納先輩が襲いかかってくる。
秀青さんは間一髪でその腕を掴むと、揉み合いながらもチェーンソーを奪い取り、瞬時に停止スイッチを切った、爆音が止み、静寂が戻った――その瞬間。
安納先輩の右手にキラリと鋭い何かが光った。
彼女はそれを握りしめ、彼の胸元を目掛けて突進した。
「あなたがいけないのよ! 私を弄ぶから!! 全部あなたのせい!!」
絶叫が廊下に響き渡る。
「ああ、栞にこんなことをさせたのは、全て俺のせいだ。本当に悪かった……。でも、最初に好きだった…気持ちに……嘘はない……」
彼はしっかりと彼女の目を見つめながら、壁に背をつけてずるずると座り込んだ。
ここから私の記憶がない、、、
誰かが救急車を呼んだ声は憶えてる。
沙藤さんの声だったような気がする。




