透青と秀青
透青と秀青
「帰る前に、あと一つだけ質問が……」
どこぞの有名警部のように、しぶとく食い下がってみる。
「……人払いをしよう」
ハザマ様が目線を送ると、執事の惟光さんが、集まっていた親戚たちを別室へ誘導してくれた。空気を読んだお役目様も席を外し、室内には私とハザマ様の二人だけになる。
殺風景な部屋の襖がピシャリと閉められたのを確認し、私はまず、彼の本名を教えていただいた。
「私の本名はトウセイだ。『透き通る青』と書く」
「透青様。あの手紙には、一体何が書いてあったのですか?」
「詳しくは言えないが……これから起こる出来事を知らせておいた」
「あの手紙を読んでから、秀青さん、まるで人が変わったようになってしまって……」
「私のせいだとでも言いたいのか? 選択したのは秀青だ。……なんなら」
透青様は事もなげに言う。
「私を秀青だと思って接してくれて構わない。名前だって『透』からしんにょうを抜けば『秀』になる。一卵性双生児でDNAも同一だから100パーセント秀青だ。物理的に」
いやいやいやいや! 何を言っているんだこの人は。
どんだけゴリ押しで自分を推してくるの。
――でも確かに、まるで二人が入れ替わってしまったかのような……。
「入れ替わってなどいない」
また心を読まれた。やめて、本当に怖いから!
「いずれ然るべき形に収まる。私を信じ、何が起きても動揺しないでほしい」
いや、今一番私を動揺させている張本人に言われましても……。
結局、何ひとつ釈然としないまま、私と同じく状況に置き去りにされた両親と共に、深い困惑に包まれながら帰路についた。




