昭和の良識 vs 平成男子の我儘
お役目様とハザマ様の二人に見つかってしまい、私は観念して姿を現すしかなかった。
「聞こえていたのなら、話が早い」
ハザマ様に促され、私はその部屋へと足を踏み入れた。
通されたのは、驚くほど殺風景な部屋だった。置いてあるのは筆記用具とノートパソコンくらいで、外出用のカバンすら見当たらない。
生活感がまるで感じられない空間に、余計に緊張が高まる。
「あの……その、つまり……。私のところに毎晩やってきていたあの霊というのは……」
思い切って問いかけると。
「私だ」
ハザマ様、即答。
「……!!」
頭が真っ白になり、言葉が出ない。
なんで? なんでなんで??
混乱する私をよそに、ハザマ様は淡々と言い放つ。
「他の男に触れられる前に自分のものにしたかった」
「だからといって、嫁入り前の娘にそんな真似をするなど許されません!」
お役目様、パーフェクトに正論。
だが、ハザマ様はぷいっと私から視線を逸らすと、事もなげに呟いた。
「……嫌がってなかった。むしろ喜んでたろ」
(それをここで言うなああああぁぁぁぁ!!)
心の中で絶叫する。
まさに「昭和の良識」対「平成男子の我儘」といった口論だ。
顔が一瞬で爆発しそうなくらい真っ赤になり、金魚のように口をパクパクさせるのが精一杯で、まともな反論すら出てこない。
「初音、この透青はそういう男です。あなたがはっきり拒絶しないと、どこまでも図々しくつけ込んできますよ」
呆れたように溜め息をつくお役目様の言葉に背中を押され、私は意を決して本心を吐き出した。
「秀青さんと疎遠になって寂しかったから、流されるままにしていただけなんです……。ハザマ様にただ寄り添っていただけるだけで、心は十分癒やされています。だから……もうあの部分は触らないでください」
「……わかった」
拍子抜けするほど素直に、ハザマ様は頷いた。
ふと気づけば、部屋の外からはざわざわと人々の話し声が漏れ聞こえていた。この破天荒な口論を聞きつけた親戚たちが集まってしまい、ちょっとした騒ぎになっているらしい。
「あのハザマ様が、お役目様に真っ向から意見するなんて……」
障子越しに聞こえる驚きの声を耳にしながら、私は恥ずかしさのあまり、その場に崩れ落ちそうになっていた。




