喪失感と見えない手
季節が寒く移ろうにつれて、私の心も冷たく喪失感に苛まれていた。
噂によると、秀青さんは登山をしたり、有給を使って北海道へスキーに行ったりと、アグレッシブに行動しているらしい……。
私といえば、風邪をひいてしまったらしく、頭痛と倦怠感、食欲不振で寝込んでいた。せっかくの冬休みなのにどこにも行けず、家で布団をかぶっているだけ。
数か月前の私は、あれほど天にも舞い上がるような気持ちだったのに……この落差は何なのだろう、と落ち込んでいた。
母が買ってきてくれたゼリーすら喉を通らない。朦朧とする意識のなかでうつらうつらしていると、ひんやりとした手が、ピタッとおでこに当てられた。
お母さんかな……と思いつつ、その心地よさに身を委ねる。
しばらくすると、
(あれ? 頭痛が治ってる……?)
意識もはっきりしてきた。ゼリーを食べ、空のカップとスプーンを台所に持っていくと、母が「食欲、ちょっと出た?」と声をかけてきた。
「さっき、おでこに手を当ててくれたの、お母さん?」と尋ねると、母は怪訝な顔をして言った。
「私じゃないわよ。やだ、怖いこと言わないで。お父さんは会社だし……」
この家には二人しかいないのに、お母さんじゃないとしたら……夢だったのだろうか。
まあ、それでもいいか。体調が回復してきたんだから。
しかし、それは夢ではなかった。それから同じようなことが数回起き始める。
生理痛に耐えきれず、横になっていたときのこと。
「我慢するのやめて、薬飲んじゃおっかな……」
そう思っていると、お腹や腰をさする温かい手を感じた。しばらくすると、痛みが嘘のように消えてしまったのだ。
何事? 幽霊?
……まあ、いっか。悪いものじゃなさそうだし。
たまに肩が凝っていると揉んでくれたりもする。
私を心配してくれているご先祖様か、それとも守護霊様なのかもしれない。
私は手を合わせながら、心の中でそっと感謝した。




