落ち葉の季節と、遠ざかる心
あれから二か月ほどが過ぎ、道に落ち葉が舞う季節になった頃。私と秀青さんの関係に、明確な変化が訪れた。
あの手紙を読んで以来、秀青さんの雰囲気はどこか変わってしまったのだ。あれほどの「人たらし」だったというのに、必要以上に他人と関わろうとしなくなった。
私と話しているとき以外は、まるで遠くの場所に心を置き忘れてきたかのような、不思議な空気を纏っている。
だが、そのミステリアスな雰囲気がかえって拍車をかけ、彼は女子学生たちの間でますます人気者になっていた。
会う頻度も自然と減ってしまい、今度は私が嫉妬に苦しめられることになってしまった。
ある日、景観設計学科の教室をのぞいてみると、女の子たちがきゃあきゃあと秀青さんにまとわりついていた。
彼は彼女たちを冷たく突き放すでもなく、上手にいなしながら、課題や卒業制作の進み具合について指示を出している。
秀青さんと少しでも長く一緒にいたいらしい学生が、甘えた声を出した。
「ねぇ、月島さぁん。水張りができないんです、手伝ってください〜」
そう言ってすり寄っていく彼女に、秀青さんは本心を見抜いた笑みを浮かべた。。
「こら、沙藤。君の能力ならこれくらい一人でできるはずだろ。本当に無理だと思ったら、また呼びなさい」
わざと本人にやらせようとする秀青さん。
(……あの沙藤って子、出来ないフリをして秀青さんに近づくチャンスを狙っているんだわ。あの泥棒猫! 水張りなんて、一年生のはじめにマスターしているはずでしょ!)
見ているうちに心がどんどん荒んでいくのが分かり、私はいたたまれなくなって自分のアトリエへ戻ることにした。
一体、あの手紙に何が書かれていたというのだろう。
もしかすると、もう秀青さんの心は私の元へ戻ってこないような気がする。かといって、私にできることなんて何もない。
他人の心を無理やり自分に向けさせることなんて、絶対にできないのだから。引き留めようと思えば思うほど、人の心は遠くへ逃げていってしまうから。




