手紙
日曜日。森林公園にある大きな池のほとりで、私は秀青さんと待ち合わせていた。
ハザマ様から預かったあの封書を渡すためだ。
大学内で顔を合わせないよう気をつけているため、二人きりで会えるのは日曜日くらいしかない。
無事に封書を手渡した後、私はハザマ様から聞いたばかりの「インターネット・霊界雛型説」を嬉々として語って聞かせた。
「ね、面白いでしょ?」
無邪気に同意を求めた私の期待に反して、秀青さんの様子がおかしかった。
いつもなら“コミュニケーションお化け”で人の当たりの良い彼が、あからさまにムスッとした顔をしている。
「面白くない」
低い声で一蹴された。
「大学じゃ俺に対してそっけない態度だし、周りには俺のことなんて全然興味ない……って言ってるらしいじゃん。学生の子たちから聞いたよ。……それに何? 霊界とか、目に見えない話をされたって信じられるわけないだろ」
(なんか……怒ってる)
秀青さんに生き霊の事、言っても信じてもらえるだろうか?信じないよね.......普通なら「頭大丈夫?」と思われるのがオチだ。
でも、信じてもらえないのを覚悟の上で、伝えられた事を打ち明けることにした。
「あのね……他にもハザマ様から言われたことがあって。……絶対信じてもらえないと思って黙ってたんだけど」
「なに?」
「秀青さんのファンの子たちが嫉妬して、何人もの生き霊が私に憑いてる……んだって」
——やっぱり駄目だろうな。そんな怪しい話、信じて——
「ああ、それは信じる」
「俺、モテるし。君に嫉妬が向けられるのは当然でしょ」
(信じるんかーい!)
心の中でコケた。
そこは疑わないんだ、この人。
「……でね、『嫉妬を引き起こさないように行動しなさい』ってアドバイスされたの」
「ふーん」
「それは理解したけど……なんで初音は、そんなに嬉々としてハザマの話ばかりするわけ?」
「だって、純粋に興味深いじゃない?」
「……………………」
あらら。また黙り込んでしまった。
マズい、機嫌を損ねてしまった。
この気まずい空気を切り替えようと、私は慌てて話題を変えることにした。最初に渡したあの封筒を指さす。
「そ、そういえば! その封筒の中身って何なの? やっぱり手紙?」




