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デストロイエンジェル  作者: 零時桜
第十章『破壊の天使』
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第十章『破壊の天使』 - Ⅷ

 ファロトへ繰り出される斬撃は収まるどころか徐々に威力を増していっているようにも思えた。が、クレインも負けてはいない。槍の軌道修正をしつつ、アミナを捉えようと刺突を繰り返す。堅牢な要塞のようなクレインと、それをこじ開けようとするアミナ。お互いの距離が再び離れて、武器を構えた状態でぴたりと静止する。


「ヒドゥンは私たちの共通の敵。狩るべき対象。私はそう教わったわ」


「お前たちはそうなんだろうな。後輩たちにそう教えるように上層部へ打診したのも全部ルーシャだ。はは、ヤツもアタシたちを裏切らずに人間界に降りてりゃ、今も生きてたかもしれないのにな」


 ササコ先輩から聞いた話とも合致する。アミナたちは執行兵のシステムを作り、表向きはヒドゥンを狩る目的で人間界に降り立ったが、それに真っ向から反対したルーシャさんはヒドゥンやアミナたちと戦う道を選んだ。結果、ルーシャさんは殺され、アミナたちはディカリアと名を変えて人間界を支配しようとしている。


「あなたの野望は歪んでいるわ。よりにもよってあのヒドゥンと協力するだなんて」


「お前たちには死んでも分からねえよ。例を挙げるとな、クレイン。お前はただの復讐心で動いているに過ぎない。お前にとってはヒドゥンなんて二の次だ。アタシの命が何よりも欲しいはず――それと、全く同じなんだよ」


 アミナにとって人間界の支配は、何にも代えられない快楽となり得る。その計画を根本から潰されたのだから、激昂してルーシャさんを手にかけた。


「アタシは目的のためなら敵とだって手を組むし、一番近くにいた親友だって殺す。実に単純明快だろう? アタシにとってルーシャは邪魔な存在だった。何せ、ヤツがアタシの計画に気づいて上へ報告しなければお前たちは存在しなかった。奴に計画を狂わされたと言っても過言ではないな。まあ、改めてディカリアへ誘ったときもキッパリと拒絶されたしな。そんな態度も気にくわなかった」


「その程度の、あなたの勝手な都合で、お姉ちゃんは殺されたのね?」


 ファロトを握るクレインの手に力が籠る。爆発しそうな怒りを、必死に抑えるように。


「前にも言ったな、お前にとってはその程度のことでも、アタシにとっては重要なことだったんだ。文字通りアタシの運命を決定づける出来事だった。それだけの話だ」


「そう。聞けて良かったわ、ありがとう」


 クレインの言葉は短く冷たい物だった。端から聞いている僕からしても、背筋が凍りそうな感覚だ。そして、突如。銀色の閃光のように、クレインは鋭くアミナに肉薄する。アマトを装備していたときよりも数段早い。アミナがルーシャさんを殺した理由を聞いたからか、それともファロトの力なのか。左手の盾で、思い切りアミナへ殴りかかろうとする。


「お前、何をッ!?」


 まさか盾を武器にするとは思わなかったのだろう、アミナはヒドラの刀身でそれを受け止めるのが精一杯の様子だ。アマトを使っていた時のクレインは、両手の槍での攻めを得意としていた。ファロトの盾はあくまでも防御のためのもの。そんな先入観を覆すように、クレインは盾での殴打を狙ったのだ。


「お姉ちゃんはこんな使い方はしなかったでしょうね。でも、私はお姉ちゃんじゃない。あなたに負けたルーシャじゃない。あなたを倒す、クレインよッ!」


 クレインの言葉に籠る確かな意志。さすがのアミナも反撃に移れず、盾の殴打を受け流して後方へ回避する。だが、それこそがクレインの本当の狙い。突き出した盾と入れ替わるように、右手の槍を振り払う。アミナが回避した距離よりも、ファロトの槍の方がリーチに分がある。ファロトの槍が、アミナの左脇腹を捉えた。


「が、ッ……!?」


 槍による殴打の効果は確実にあった様子だ。苦悶の声を上げるアミナ。そのまま勢いのまま横へと吹き飛ぶが、寸でのところで体勢を立て直す。クレインにとっては初めてまともに入った一撃だ。刺突ではなかったにせよ、身体の奥からダメージを与えていく殴打。


 しかし。クレインと距離を取ったアミナは患部を押さえつつ、逆に高笑いを投げた。


「くッ、はははッ! やっぱり無茶苦茶だよ、お前は。ルーシャならそんな戦い方は教えない。お前がヒドゥンを狩る中で見つけて、確立していった戦い方ってことだ。それはまあ、素直に認めるべきだよな」


「あなた、何を……」


 痛手を負いつつもクレインを認める旨の発言をするあたり、さすがの余裕と言ったところか。クレインも困惑する中、アミナは再び武器を構えた。


「ルーシャに対しては正攻法で斬り込んで勝てた。でもそれじゃあお前には勝てないと分かった。なら……奥の手を使うしかねえよな? ルーシャにも見せなかった手段で、お前を殺してやる。光栄に思えよ?」


 ニヤリと口角を上げたアミナ。そのときだった。




 ――ヒドラの刀身が濃い紫色の光を帯びた。そして、周囲に同じ色の霧のようなものが弾ける。それは屋上全体を覆うような勢いで拡散し、もちろんクレインや僕にも届いた。

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