第9話 代償
『違う……』
イーグの鳶色の瞳が光った。
彼女の長い金髪が、逆立った。
ワタシは、息をのんだ。
ーー失敗した? あり得ない!
『この名前は、私の名前ではない!』
『チガウ! チガウゥ!」
部屋の空気が重くなった。
風が吹き荒れる。
ベッドに転がされていたフィニアスも、目を丸くしている。
精霊以上の力を初めて見たのだ。
それは、ワタシも同じことだ。
ーーこれ以上の厚は、神殿に気づかれる……
フィニアスの前では、やりたくない手だが仕方がない。
……でも、竜に効くだろうか?
ワタシは、隙をみて力業に出ることにした。
チョップの構えをしたところで。
「スゲーー!! さすが竜だぜ」
な、な、な、何をこんなときに感心してるんだ? この男はーー?
一瞬、手が引っ込んだ。
フィニアスのアホは、風の貴婦人とは違う圧倒的な力に、惚れ惚れしてしまったようだ……
変なところだけ、魔法使い根性を出すなよーー
「フィニ、危険です。ベッドから離れないで下さい」
「なんだよ~ 二人でしか分からない言葉で話して俺をーー」
言いかけたフィニアスの壁に前に、ガラスの欠片が刺さる。
「あの……お怒りですか? お嬢さん」
ワタシは、叫んだ。
『これ以上の力を解放すれば、神殿に気づかれますよ』
そして、改めて彼女に言った。
『気に入らなくても、今は、イーグでいてください。
真名は、いっしょに探しましょう」
『名前を探してくれるの?
ーー本当に……?』
力の暴走に、疲れはてたイーグは、ベッドに倒れた。
もう安心だ。
ワタシも起きていられない。
寝よう……
そのとき、フィニアスが話しかけてきた。
「なあ、なんで怒ってたんだよ。彼女」
「あなた、魔法使いですよね?」
「当たり前だろ!! 高貴な精霊と契約してるんたぜ」
「どうやって、契約しました?」
「ん? 決まってるじゃん。古代レトア語で……あれ……」
ここまで、クズだとは思っていなかったーー




