第77話 後日談
光の神殿から、警備騎士が来た。
女王を銀の森まで護送することになった。
女王は、歩いて護送することになる。
その後。
銀の森で、裁判が開かれることになった。
意外だったのは、エルブラント王子だ。
幼くとも状況を理解していた。
「母上!! 待ってますから、きっと帰ってきてください」
しっかりした口調。
イライーザを見送った。
イライーザは、
「エリー! エリー!」
と叫び続けたた。
フィニアスの背中の怪我ーー裂傷がひどかった。
黒魔術にも触れている。
光の聖地で、養生する必要があった。
ワタシは、ただフィニアスのそばにいた。
例外として、生家に戻ることを許された。
光の神殿にはーー神殿の前の広場に。
連日、人がたくさん集まっている。
イライーザ・テレジア・アルデバランの裁判が始まっているのだ。
罪状として並べるなら、この通り。
・禁忌魔術(黒魔術)の行使
・死者の魂への干渉
・魂の定着・移植
・王家血統への冒涜
・神託への反逆
・精霊契約の隠蔽
・虚偽報告および神殿欺瞞
・異端思想の流布
・神聖秩序攪乱罪
・禁書保管および使用
・王国転覆の疑い
神殿側は、彼女の罪を盛る。
人々は、黒魔術に魂を売り渡した悪女ーーとして見る。
イライーザは、すべての罪を受け入れた。
頷くだけ。
風が彼女の声を運ぶのは、
「エリー……」
のみ。
銀の森の奥まった一角。
フィニアスの生家がある。
父親が直系の血筋と聞く。
フィニアスの部屋。
ずっと眠り込んでいる彼に、精気を送り続けた。
浮かび上がって、窓を開ける。
神殿のほうが騒がしい。
そろそろ処刑日か……
ワタシは、窓から気配を消して、神殿まで行く。
遠くから、母だった人の最期を見届ける。
大きな斧が振り下ろされる。
人々は、どよめいた。
それきり彼女は動かなくなった。
父と離婚なんてしなかったらーー
そもそも家同士で決めた結婚か……
ワタシは、余韻に浸ることなく、フィニアスの家に戻る。
フィニアスが、意識を取り戻していた。
「あの女、死んだのか?」
「はい」
フィニアスは、思い出した。
目が覚めたら、生家だったーーここには、神の肖像画がある!
痛む身体を起こす。
居間に向かう。
大きな、銀色に輝く神の肖像画。
銀髪と銀色の瞳。
人間に近い風貌。
でも、人ならざるもの。
肖像画の下に名前が書いてあった。
ルナシエ・イリアス・エル・ロイル・グ……
そこからかすれて読めなくなっていた。
「いつからだーーこんなことになったのは」
「さあ?」
ワタシは、窓の外を見る。
《後世に、黒魔術に屈服した神だと言われたいですか?》
我ながら、うまい言い訳だった。




