第75話 神の召喚(フィニアス視点)
「名前を呼べばいい」
俺は、アルデバランの女王に言った。
「ほおーー」
俺の言葉に、女王は頬を上記させる。
「名前とは?」
「神は、五つの名前を持っているーーそれを呼べば召喚できると言われてる」
「お前は、知ってるの?」
「ロイル家の子供なら、誰でも知ってるぜ」
「では、呼びなさい」
正直、言いなりになるのは、癪だった。
背中の傷がじんじんと痛む。
限界だった。
「ルナシエ・イリアス・エル・ロイル・グ……」
何も起きない。
伝わる伝承ーー神を召喚した時には、あたりが銀色に輝いて、優しい風が吹くという。
そこに銀色に輝く、人型の神が顕現されるという。
ーー何も起きない……
なぜだ! 順番を間違えてない
「どうした?」
「全部呼んだのに……?」
「四つしか呼んでないだろう」
「えーー?」
俺は、心の中で神の名前をなぞる。
ルナシエ・イリアス・エル・ロイル・グ……あれ?
最後の名前が出てこない。
忘れるなんてありっこない。
銀の森の館ーー
居間に、飾られた神の肖像画。
その下に、書かれていた名前は生まれたときから目に入っていた。
間違えるわけないーー忘れるわけがない。
「なにも起きぬではないか!!」
女王は、声をあらげる。
手下の魔術士は、いつの間にか姿を消していた。
「このわたくしに、嘘をつくとは許せんな」
「嘘じゃないーー忘れるわけがないんだ! 生まれたときから、ずっと目にしてきたんだ」
「おだまり!! お前も前に来た魔法使いのように、首を切ってやるわ」
冷たい、鋭い刃物のようなもの。
喉元にあたる。
でも、目には見えない。
これが黒魔術なのかーー
ーーここまでなのか……
目を閉じる。
悔しいが、因果の報いか……
リリベット来なかったなーー
期待した俺が馬鹿だったかも?
「あなたは大馬鹿ですよ」
「はあ?」
気がつくと手と足の拘束が取れていた。
風が、吹き始めた。
風の貴婦人が戻ってきた。
女王は、急にねじ曲がった空間から現れたリリベットを見る。
驚いていた。
そして、確信する。
リリベットこそが、回収しようとして失敗したエリア-ドの魂であることを。




