第73話 フィニアス視点(6)
ここはどこだ?
俺は……
ーーそうだ。
あの時。
マリシェルの手を取ってしまった。
そのとたん、床に魔方陣が現れた。
リリベットの声が遠くに響いてた。
なにをそんなに固執するんだ?
エリーの魂を、自分で回収できなかったからーー?
そりゃ、エリーを死なせてしまったのは事実だがーーあれは事故でもあるぞ。
俺は、罰を受けたし、エリーの魂を持つリリベットを育ててる。
よくやってるだろ。誰か誉めろよ。
俺は、今更ながらに気づく。
風がない。
止まっている。
空間が捻れてる?
風の貴婦人の存在も感じられない。
精霊がいない……?
ためしに、大地の呪文を唱える。
ーー無反応。
水の呪文の詠唱では?
ーー同じく無反応。
どこに来たんだ?
それに、手と足が、鎖ではないなにかで拘束されてる。
やがてやって来た。
灰色の髪の魔術士。
「フィニアス・ロイルに間違えないな?」
「その名前は、捨てたんだよ」
「こちらの調査で、その血に価値があると判断した」
ばかなことを言ってる。
「神の血筋などないものと思っていた」
黒いローブの魔術士の後ろから出てきた、派手なドレスの女が現れた。
どことなくエリーに似ている。
ひょっとして、アルデバランの女王か……?
「イライーザ・テレジア・アルデバランだ」
やはりーー
急に、手の枷が外れ、前のめりに倒れる。
「フィニアス・ロイル、わたくしに詫びることがあるでしょう?」
「エリア-ドのことなら、詫びるけど、俺は、もう罰を受けたんだぜ」
「わたくしは、お前を許してない。わたくしのーー大切なたった一人の息子を殺したのよ。お前は」
俺は、胸がキリキリ痛んだ。
大切な息子を失うと、女王も一人の母親になるのか……
俺は、床に手をつけた。
頭を下げる。
「あなたの大切な息子を、死なせてしまって申し訳ない」
「エリーのことは、それで許してあげるわ」
俺は、急に悪寒がした。
あんなに俺を恨んでいたのに?




