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幼女育成任務に名前のない風竜がついてきた!  作者: 月杜円香


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第72話 罠

 ワタシとフィニアスが、次のクエストを終える。


 マリシェルは、アルテアのギルドに戻っていた。


 ワタシたちは、健全に、危険地帯の薬草採りの任務についていた。


 魔族の多い、ゴンガガ火山に生息するーー毒薬。


 ピク草。

 人間には、猛毒だ。

 だがーーほんの少量で万病の薬ともなり得る。


 本人には、いささか手応えが無さすぎる

 でも今のフィニアスには、この手のクエストのほうが安全だ。


 クエストを終わらせて、ギルドで金を受け取る。

 最高金貨三枚、悪くない仕事だ。


「リリベット、酒場に行くぜ」


 ワタシは、酒場の扉の向こうから、嫌な気配を感じていた。


「今日は疲れました。宿に行きましょう」


「なに言ってるんだぜ? クエストをこなした日は、飲んでいいだろ」


「マリシェルが帰ってますね?」


 ワタシは、他の冒険者に聞く。


 ワタシを見る冒険者は、眉をひそめる。


「お嬢ちゃん、よくわかったね。昨日帰ってきたさ」


「どこか、変わったところは?」


「疲れたらしくて、誰とも話さねえな」


「フィニ。今日は他に行きましょう。あなたの好きな宿を取ってもいいですからーー」


 ワタシは、必死に止めた。

 扉から漏れ出てくる、臭気が鼻をつく。

 ーー周りのものには、悟られてない。


 フィニアスは、引かなかった。

 ここにキープしてある、高級酒が飲みたい一心でーー今回のクエストを頑張ったのだ。


「高級宿にも泊まる。酒も飲む」


「扉を開けると後悔しますよ」


 ワタシは、手を引っ張って止めた。

 ーーフィニアスは、酒場への扉を開けていた。


 ワタシは、思わずギルド側へ逃げた。


 フィニアスも、空気の流れが異常なことに気がついた。


「よお、フィニ。クエスト終わったのか?」


 いつも冗談を言い合う仲間。

 近づいてきて、フィニアスに酒を進める。


「マリシェルが、お前が帰ってくるのをーーずっと待ってたぜ」


「マリシェル? アルテバランへ行った?」


 そのとき。

 フィニアスの背後。

 死人のように青ざめたマリシェルーーゆらゆら浮かぶように立っていた。


「フィニアス・レイ。私を助けて」


「明日の正午までに、アルデバランの王城まで行って。でないとーー私……私、殺されてしまう……」


「なんだって?」


 フィニアスは、グラスを落とした。

 手が震えている。

 みるみる蒼白になった。


 ワタシは、結界を張りながら、酒場の扉をくぐる。


 マリシェルを見る。

 黒魔術を仕込まれた痕跡がある。


「行かなきゃ……」


「行かなくてもいいですよ」


「なぜだーーマリシェルの命がかかってるんだぜ」


「あのマリシェルは、ただの影です。ーーよく見てください。首と胴体が微妙にずれてますよ」


 フィニアスは、再び、マリシェルに目をやる。


 彼女は、人型を取るのがやっとようなーー生気のない人形だった。

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