第70話 アルデバランの女王
「ハワード、フェザー」
「はっ、陛下」
「エルブラントは、相変わらず?」
「はい、健やかに塔でお過ごしです」
ハワードは、膝を折って答える。
女王は、扇をぱちんと閉じた。
「言葉を発したか?」
フェザーが、言葉を濁す。
「いえ、それは……」
女王は、もう一度聞く。
「耳は?」
ハワードは、女王の顔が見られない。
「聞こえてないようです」
「なんとしても、治しなさい!」
ヒステリックな、声が玉座の間に響く。
「もう、五年だわ! 一番かわいい盛りの時をーー人形みたいに……
私のかわいいエリーに! あれは違うものにされているだけよ」
イライーザ女王のもとを、下がったハワードとフェザーは、顔を見合わせて溜め息をついた。
「王子のご病気は、ーー無理な空間移動の後遺症だろ?」
「あの時、確かに《《本物》》が近くにいたはずなんだがーー」
二人は、もう一度顔見合わせる。
同時に溜め息をつく。
黒魔術の系統は、闇の術式。
光の術で癒せば、完治する。
……ことは、二人にもわかっていた。
二人は、短く相談する。
そして決めた。
アルテアの冒険者ギルドにーー魔法治療士を依頼した。
「マリシェル、アルデバランのクエストに行くんだって?」
ギルドの酒場。
食事をしていたワタシと酒を飲んでいたフィニアス。
逃げるように、飛んで帰ってきた。
さすがのフィニアスも、自分が狙われているとは思わなかったーー
風の貴婦人に、全速力を出させて帰ってきた。
宿につくなり、眠ってしまう。
こんなときでもか……と呆れながら、顔を見ると、目に涙が伝っていた。
朝になって復活したフィニアスは、朝から酒場に行った。
ワタシに食事をさせて。
「また、アルデバラン絡みのクエストかーー?」
マリシェルは、風と水の魔法使い。【神殿公認】の腕のいいえ治療士でもある。
ギルドのA級だ。
二十歳半ばだろうが、一人でクエストを受けることが多い。
腕は、確かなのだが、ケチでも有名だった。
この人が、あの国へ行くーー
治療士の魔法使いが呼ばれるなんて?
ワタシの心は嫌な予感しかしなかった。




