第67話 行き先変更
馬車が見えなくなっても、ワタシは立ち尽くしていた。
胸がざわざわする。
冷たい風が通り抜ける。
フィニアスをーーあの国には絶対に近づけては行けない。
空間を歪ませる、
フィニアスの足取りを探る。
フィニアスの銀色の髪をたよりに。
黒魔術の気配……
ルシアンが、すごく直感が働くタイプだな。
黒魔術に、すごく嫌悪感をいだいてる。
この様子では、光魔法は封じられる。
ーー急がなくては。
ワタシは、魔方陣をつくって、中央に行った。
ほどなく、フィニアスの近くの空間に繋がった。
フィニアスは、ルシアンを街路樹にもたれかけさせ、介抱していた。
空間にわずかな穴を開けてる。
フィニアスの頭に、直接話しかけた。
《フィニ》
頭の中に直接、呼びかけたので、フィニアスは、戸惑っていた。
「リリベットか……?」
《そうです。早くここから離れてください》
「でも、ルシアンをこのままにしておけんだろ!」
《どのみち、御者もこれ以上進めませんーーアルデバランには行けませんよ》
「仕事を投げ出すのは嫌だぜ」
《今回は諦めてください》
一番危ないのは、フィニアスだ。
もっと、進めばーー
完全に、アルデバランの魔術師たちの術式に引っ掛かってしまう。
《仕方ありませんね》
ワタシは、馬車の隣の空間から飛び出した。
風が吹いていない。
人の気配がしない。
でも洗濯物は干されている。
ーーわかる人には、わかる異常。
精霊の力も封じ込める、小手先の黒魔術。
ワタシは、まずフィニアスの気配を消す。
フィニアスに向かって、風のマントの術をかけた。
闇の術も混ぜたので、相殺されて向こうには気がつかれない。
自分にも同じ術をかけてある。
そしてルシアンに。
「ルシアンさん。このままアルデバランで遊ぶ気なら、アルテアに大きな学院を創るためにーー銀の森で勉強したほう後の世のためになります」
「な……」
ワタシは、ルシアンの前に立つ。
暗示めいた言葉を紡いだ。




