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幼女育成任務に名前のない風竜がついてきた!  作者: 月杜円香


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第66話 フィニアス視点(5)

 俺とルシアンは、陸路を二頭立ての馬車で進んだ。


 馬車の内装は、牛の皮貼りで水鳥のクッションが用意されていてーー居心地の良いものになっている。


「贅沢な馬車だぜ」


 軽く口笛が出る。


「貧民には、乗れまい。感謝しろ」


 嫌な奴だ。

 俺は、心で舌を出して、窓の外に目を向けた。


 季節が良い。

 春の陽気。

 風が揺れる。

 馬車の窓から気持ち良くーー入ってくる。

 俺は、馬車に揺られて、ついうとうとしてしまった。


「……おい」


 俺は、肩を揺さぶられて起こされた。

 誰だよ。

 気持ち良く寝てるのに!


「……お前、俺の護衛だろーー」


「!?」


 死にそうな声で話しかけてきたルシアン。


「どうしたんだ?」


「気持ち悪い」


「魔方陣だけじゃなく、馬車でも酔うのかよーー」


 俺は、呆れて言っちまったが。

 ルシアンの顔は、真っ青で。

 すぐさま、行者に頼んで馬を止めてもらった。


 街中なのに、人の気配はない。

 街路樹の下に、ルシアンを下ろした。

 ルシアンはーー盛大にリバースしている。

 顔色も死人のようだ。

 だいぶ、我慢をさせてしまったな。


 リバースしたあとには、立てないくらいに弱っていた。


「風の貴婦人、回復の風を頼む」


 <私は、癒しの力はありません>


 俺は、ここで気がついた。

 俺は、クエストで困ったことがないーー困ったことが起こっても、大抵なんとかなった。


 なんで今回に限って、俺は困ってるんだ?

 こんなに楽なクエストのはずなのに?


 リリベットが、いないからか?

 ーーまさかな。


 <フィニアスさま>


 風の貴婦人が話しかけてきた。


「どうした?」


 <力が出ません>


 そんなバカなーー


 念のために古代レトア語を使って、貴婦人を使役してみた。


『貴婦人、風を吹かせてみろ』


 <無理です。力が出ません>


 何が起こってる?





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