第65話 置き去りにされました
「空を飛んでいった方が早いのに」
「バカか? オレは高所恐怖症だぞ。皮貼りの馬車でしか、移動したことがない」
「なんなら、魔法陣で」
「酔う」
ルシアンは、そっぽ見ながら言い放つ。
「まったく……」
フィニアスは、ぼやきながら馬車に乗り込む。
ワタシも乗り込もうとした時、扉が締まった。
?
「子守りつきで、仕事をする気か?」
ルシアンの冷たい言葉が、ワタシにふりかかる。
「リリベットのことは、ギルドにも許可をもらってるんだーー
連れてくぜ」
ワタシは、ルシアンを見上げた。
興味のない顔が、見下げてくる。
「子供は、うるさいし、わめくし、泣く。嫌いだ」
「ワタシが行かないと、危ないですよ」
ルシアンは、懐から銅貨を二枚出してワタシに握らせた。
「それで菓子でも買って、宿で待ってろ」
「ワタシは、フィニの心配をしているんです」
ルシアンは、フィニアスを見て吹き出した。
「お前、こんな幼女に心配されてるのか? 大丈夫か?ーーS級の魔法使いだと聞いてたのに」
唇を片方だけ上げる。
明らかにバカにした笑い。
ワタシは、再び、フィニアスに言った。
「フィニ、やめるなら今ですよ」
「リリベット、何を言ってるんだーー行ってくるぜ。おとなしく待ってろ」
行者が馬を鞭で叩き、馬車が出発する。
乾いた砂ぼこりが舞い上がる。
置いてけぼりにされてしまった。
この二年、フィニアスは、ワタシをおいてクエストに出たことはなかった。
アルデバランは、前世では故国だがーー今は……
フィニアスのほうが狙われている。
女王が、ワタシを殺したフィニアスのことを許したわけではないんだーー




