第63話 アルデバランの依頼書
フィニアスが、ふて寝している。
アルテアよりも東北部にある、アルデバラン王国。
そこには、黒魔術士がいる。
あの国は女王からして《《あれ》》だ。
五年前のエラルードでの乳児誘拐事件にも関わっている。
ーーあの人はまだ、ワタシのことを諦めていない。
……関わったら、面倒なことになる。
……今は、代わりの人形で我慢してるだけだ。
なにより、フィニアスを絶対に許さないだろう。
ーー五年前にエリアードを死においやったフィニアスを……
彼に目をやる。
次のクエストの依頼書、チェックしながら。
アルデバランへの護衛の仕事があった。
報酬は、高い。
でもーー
気が乗らない。
風が諫める。
<あの国には、近づくな……>、と。
それでも、このクエストを成功させればーー
この二年、地道にクエストをさせてきた。
嫌がるフィニアスに、パーティーを組ませてクエストに出させたり、砂蠍の駆除を地道にやらせた。
その結果ーーフィニアスのランクは二年でSランクに戻すことができた。
そして、『神殿公認』の魔法使いになることも夢ではない。
……アルデバランには、近づくべきではない。
だがーー
クエストの依頼書から、目が離せない。
その時。
大きなあくび。
伸びをするフィニアス。
「なんだ? 依頼書か? 高いのにしろよ。俺は、安くないぜ」
ワタシは、眉をひそめる。
自分で言うことなのか。
「パーファー家の御曹子が、アルデバランへ留学するそうですよーーその護衛を」
軽い口笛。
「パーファーと言えば、ギルドの元締めじゃん。受けようぜ」
「あなたは、アルデバランに近づかないいほうがいいです」
「アルデバラン?」
一瞬、顔を曇らせる。
「でも、高いんだろ? 報酬」
でも、報酬に釣られるフィニアス。
「はい」
フィニアスは、ワタシから依頼書を取り上げる。
詳しい依頼の内容を確認していた。




