第60話 モルガン夫妻の決断
これはやばいーー
日に日に、リリベットの『奇跡』が領民たちの間で噂になり始めている。
家の中から手をふってきたばあさんーー
嫁と同じくらいに、若返ってる。
昨日は、鈴なりだった畑。
今日は、実がでかくなりすぎて、爆発してる。
偶然ですませられることじゃない。
もはやーー領民も感づいてきた。
領主ざまのところのお嬢さまは、人外の力をお持ちだとーー
モルガン伯爵夫妻も、頭が痛い。
このままでは、神殿に見つかってしまう。
そうしたら、あの子はどうなってしまうのか?
それよりも、神殿の干渉がなくて気楽だったこの地に、神殿の監査など来たら、どう生活が変わってしまうのか?
モルガン夫妻は、幾夜も寝ずに相談した。
夫人の目元には、くまができるほどだーー
そうして、出てきた結論。
俺が呼ばれた。
なんで?
「リリベットは、身の安全のために《《この領内》》におけなくなった。
フィニアス・レイ、リリベットのことを頼む」
俺は、膝から崩れそうになる。
あんな厄介な、お荷物もらっても嬉しくない!
「君にしか頼めない! どうか!リリベットを頼む。養育費なら、一括で払おう」
「やりま……」
金の話をされて、即答しかかる。
まてまて、これは、それ以前の話だ。
規格外の力を持った、リリベットを俺がどうこうできるわけがない。
「ここは、リリベットの意見も聞いた方がーー」
「そうね……」
と、モルガン夫人。
そうさ、リリベットが俺なんかといっしょに、来るわけがないんだ。
俺は、仕事が終わったと思った。
にやけてしまう。
外から、風が通り抜ける。
リリベットが散歩から、帰ってきた。
「リリベットちゃん、今日は早かったのね?」
「おかあしゃま、ワタシ、フィニと行きましゅ。育ててくれてありがとう」
まだ何も言ってねぇのに、返事してるしーー
「フィニ、振り出しに戻っただけれしゅ」
リリベットは、相変わらずの無表情な顔で俺に言った。
俺の前を冷たい風が通り抜ける。




