第6話 農夫の娘
ワタシは、宿屋の女将に自分のドレスを三着渡し、古着屋で女物の衣服を数着用意させた。
フィニアスは、ワタシに高級なドレスを着せ、いかにも高貴な娘を預かっているように見せている。
ーーけれどワタシは、そんな生まれではない。
ただの農夫の子だ。
母は、神殿に頼んだ。
ワタシの魂の行方を、探せと。
アルデバラン郊外。
農夫の十番目の娘――それがワタシだ。
神殿は、ワタシを見つけた。
けれど。
ワタシの魂は、その時すでにーー
天界をさ迷っていた。
そこで、『恵み』にあった。
ーー本来の人間なら、決して交わせない約束を。
太陽が登る頃、やっとフィニアスは帰ってきた。
財布の中身がなかったと見えて、安酒の匂いをぷんぷんさせていた。
竜的には、この匂いはどうなのだろう。
「ーー何だ!!」
「この匂いはーー!? 誰の仕業だ」
「ワタシですが?」
しれっと言うワタシに
フィニアスは、舌打ちする。
「台所の方には、近寄らないように」
「お前、なにオイタしてしてるんだ!?」
「死にたくなかったら、台所に近づかないで下さい。今、浄化中です」
フィニアスは、酔いが冷めたようだ。
ワタシに、いつになく真面目な顔で聞いてきた。
「何があった?」
「竜を拾いました」
「はあ?」
フィニアスは、ワタシの頭越しに、ぐっすりと、眠っている少女を見た。
「この時代に竜か?」
「珍しくもありません。人前に出てこないだけです」
「竜の心臓は、高く売れるぜ」
フィニアスは、嬉しそうに言う。
「早速、神殿に連絡だぜ」
ーーこの男が手助けしてくれる……そう思ったワタシが愚かだった。




