第58話 エリアード
「いつのときだ?」
ーーまさか、と、思った。
リリベットは、無表情な顔で言う。
「ワタシが死んだときのことでしゅよ」
相変わらず、無表情。
風だけが柔らかい。
「三年前は仕方ありましぇんね。
あなたに赤ん坊の世話など、
無理な話でしゅ」
「エリー!?」
恐る恐る読んでみる。
「今は、リリベットでしゅ」
代わらす、無表情な顔。
エリアードとは、冒険者ギルドを登録したときに知り合った。
銀髪の俺。
金髪のエリアード。
周りの者にもてはやされて、コンビを組んだ。
まだ、やつは十歳だった。
多くは語らなかった。
でも、生きていくために、ギルドへ来た……と。
俺たちは、年若だった。
ベテランの冒険者に預けられる。
そこでーー二年修行したあと、二人で独立した。
アルデバランの貴族の息子
とは、あとで知ったこと。
整った顔立ちと、丁寧な言葉遣いで
女に間違えられていた。
あいつが十九歳になったころ、サーベルタイガーの牙を取るクエストがあった。
俺としては、もう十分待った。
一度くらい、そういう関係になっても……
くらいの気持ちだったのだがーー
……サーベルタイガーの牙切りの作業をエリアードに任せてたんだよ。
結果ーーエリアードは、疲れてぐっすり寝ていた。
そこに俺が裸で、忍び込んで行ったものだからーー
驚いた、エリアードの掠れた声。
急に倒れ混むーー
びっくりした俺は、逃げ出した。
山の中で気配を消して、隠れていた。
ずっと、後悔して。
だが、捕まった。
ギルドと神殿の魔法使いが、合同で捜索したらしい。
俺は、ギルドの手に引き渡されて、仲間を死なせた罰則金の支払いを命じられる。
「罰なら受けたぞ。SランクからCランク魔法使いに落とされたーー誰も俺とは組んでくれなくなった」
「それは……かわいそうでしゅね」
「絶対に、意味がわかってないだろ」
風が、揺れる。
リリベットは、俺の胸に手をかざす。
黒い煙が、俺の身体から出てきた。
胸に支えてたものが少し軽くなった……
「いらないものを、処理しました」
リリベットは、言う。
ーー救われた気がしたしねぇ。




