第54話 フィニアス視点(3)
俺は、ギルドに逃げ込んだ。
そして、仕事を選ぶ
長期間であること。
エラドーラからできるだけ、遠方であること。
神殿の呼び出しには、二度と応じないこと。
そうして、あっという間に三年がたった。
久方ぶりに、アルテアに戻る。
(風の貴婦人を休ませなきゃな……)
石畳に、海風が心地よい。
「今夜は、久々に酒場のあとに遊ぶぜ」
頭上の契約精霊、風の貴婦人に言う。
‹好きにしてください›
風が揺れた。
貴婦人も了解してくれたぞ!
今夜は羽目を外すか。
今回は、約半年ぶりの帰還。
前金はもらったが、成功報酬は、これからだ。
俺は、ギルドに入る。
受付嬢が俺の顔を確認する。
足早でそばに寄ってきた。
なんだ?
「フィニアス・レイさん、ご指名でクエストきてます」
「少し……休みたいんだけど」
「大丈夫です。小国令嬢の魔法の手ほどきです」
「断る」
即答。
面倒。
「前金で最高金貨、三十枚」
「やります」
借金が全部返せるぜ。
地味に、エリアードの賠償金の時の借金が苦しかった。
「……で、どこへ行けばいいんだ?」
「では、契約は、こちらで」
受付嬢がカウンターに案内してくれた。
皮紙を受け取る。
《リリエンハイム公国、モルガン伯爵令嬢、リリベット嬢の魔法指南》
リリベット?
もう一度、皮紙に目をやる。
間違えない。
俺の背中は、嫌な汗が流れた。
終わった名前のはずだ




