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第47話 リリベット誕生
「……リゼッタでいいか」
その瞬間。
空気が、歪んだ。
「……は?」
腕の中のそれが、初めて動く。
小さな手が、布を掴む。
ーー泣いた。
「っ、おい!?」
か細い声。 途切れながら、それでもはっきりと。
嫌がっている。
「……なんだよ、それ」
眉をひそめる。
もう一度、口を開きかけてーーやめた。
「……じゃあ、何がいいんだよ」
吐き捨てる。
泣き声は、止まらない。
苛立って、視線を逸らす。
そのまま。
何も考えずに、口が動いた。
「……リリ……ベット?」
す、と。
音が消えた。
「……あ?」
腕の中を見る。
さっきまでの泣き声が嘘みたいに、静かだ。
指の力が、ほどけていく。
呼吸が、落ち着いていく。
「……リリベット」
もう一度、言う。
何も起きない。
ただ、静かだ。
「……それでいいのかよ」
呟く。
赤ん坊は、目を閉じた。
安心したみたいに。
「……チッ」
小さく舌打ちする。
「……リリベット、な」
言い直す。
不思議と、それ以上変える気は起きなかった。
最初から、決まっていたみたいに。
ーー気に食わねぇ。
そう思いながら。
少しだけ、抱き直した。
こんなに小さいのにーー自分で名前を選ぶのか……




