第46話 新生児育成任務
フィニアス視点
なんで俺がーー
喉の奥で、何度も同じ言葉が渦を巻く。
そりゃあ、エリーを死なせちまった。 それは認める。 逃げる気もねぇ。
でもな。 それはもう、終わった話のはずだろ。
ギルドの規則に従って、罰は受けた。
最高金貨百枚。 冗談みたいな額だ。
危険な依頼を何件もこなして、 足りねぇ分は借金までしてーー 全部、払った。
終わりにしたはずだった。
それなのにーー
「……は?」
神殿だとよ。
笑えねぇ。
銀の森に戻れるって、少しだけ思ったのが間違いだった。 ベルナールへの件も、 これでようやく区切りがついたんだってーー
勝手に、そう思った。
で、出てきたのがこれだ。
腕の中の、軽すぎる重み。
「……はぁ?」
もう一度、同じ声が出る。
首も座ってねぇ赤ん坊。
俺に、育てろ?
「どこの誰だよ、こいつ……」
呟いても、返事なんてあるわけがない。
そもそも俺は、女に興味なんかねぇ。 ガキなんて、もっとだ。
抱き方も、これで合ってんのか分からねぇし、 落としたらどうなるかなんてーー考えたくもない。
なのに。
「……泣かねぇな」
ふと、気づく。
普通、こういうのって泣くもんじゃねぇのか。 腹が減っただの、 濡て気持ち悪いだの。
うるせぇくらい騒ぐもんだろ。
でも、こいつは違う。
静かだ。
あまりにも、静かすぎる。
目を開けて、 ただ、こっちを見てる。
「……おい」
思わず声をかける。
「なんか言えよ」
返事は、ない。
当たり前だ。
なのにーー
その目が、 妙に引っかかる。
何も知らねぇはずのガキの目じゃない。
かといって、 何かを分かってるとも違う。
ただーー
そこにいる。
それだけで、 周りの空気が、少しだけずれる。
「……気持ちわりぃな」
小さく吐き捨てる。
その瞬間。
ふ、と。
風が、動いた気がした。
窓は閉まってる。 隙間風なんて入る場所じゃねぇ。
なのに。
腕の中の赤ん坊の髪が 、ほんのわずかに揺れた。
「……は?」
何も変わらない。
静かなまま。 泣かないまま。
ただ、こっちを見ている。
「……クソが」
吐き出すように言って。
視線を逸らした。
ーー面倒なもん、押しつけやがって。




