第40話 神殿の干渉
神殿ーー人の理の外にいる神がいる。
銀色の神。あの存在なら、イーグに干渉することも、不可能ではない。
ワタシのような存在の幼女すら生み出してしまう、天の側のもの。
理を外れた力を持つ以上、古竜一体の在り方に手を入れることなど、難しい話ではないはずだ。
古竜は、本来この世界の均衡に触れる存在だ。
それが人里に留まり、記憶も曖昧なまま在り続けるなど、本来なら異常だ。
危険と判断されても、おかしくはない。
ーーならば。
イーグの記憶は、意図的に封じられているのか。
そう考えれば、辻褄は合う。
真名に触れさせないようにし、存在の核を曖昧にする。
そうすれば、古竜としての力は抑えられる。
神殿が、あるいは神そのものが、そう判断したとしてもーー
不思議ではない。
だが。
ワタシは、イーグを見る。
風の中に立つその姿は、いつもと変わらない。
どこまでも静かで、柔らかく、そしてーーどこか、拒んでいるようにも見える。
外から与えられた名前を受け取らず。
差し出された手紙の意味を理解しながら、それを自分のものとはしない。
あれは、本当に封じられているだけの姿なのだろうか。
封印があるのだとしても。
それは、本当に外からのものなのか。
ーーあるいは。
あの竜自身が、閉じたのではないか。
失った何かを守るために。
あるいは、これ以上壊れないようにするために。
ワタシには、分からない。
神の干渉か。
それとも、イーグ自身の選択か。
ただ一つ確かなのはーー
どちらであっても。
今のイーグに触れられるのは、外側の誰でもないということだ。
風が、静かに吹いていた。




