第35話 フィニアス視点(2)
「風の奥方……本当のことを言ってくれよーーリンシャー王子は、何者だ?」
俺は、唾を呑み込む。
こんなに上位の精霊と話すのも初めてだ。
声を低くして、言った。
<……人の子の王子だったものですわ>
奥方は、声を落として言った。
その瞬間。
頬を、風が撫でる。
さっきまでとは違う。
ーー止めるような風。
「それは、わかってる! そうじゃなくてーー!」
思わず声が強くなる。
「リンシャー王子は……イーグの真名をつけた者だな?」
言い切った。
その瞬間。
風が、消えた。
音が、なくなる。
奥方は、何も言わない。
ただーー
ほんのわずかに、目を細める。
否定は、しない。
肯定も、しない。
だが。
それだけで、十分だった。
「……やっぱり、そうか」
喉の奥が、乾く。
やっと繋がった。
イーグ。
リンシャー王子。
そしてーー
<……人は、時に、身に余るものを与えますの>
静かな声。
責めるでもなく、ただ事実を告げるように。
<受け取ることも、拒むことも……どちらも、選びですわ>
風が、わずかに戻る。
だがもう、さっきまでとは違う。
どこかーー
「でも、名無しの古竜にイーグ《名無し》なんてセンスないぜ」
ふと出た軽口。
いつの間にか、風が止まる。
圧のある目で奥方が睨んでくる。
「あれ……?」
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