32話 リンシャー王子は何者
「リリベット!! 二つ向こうの山まで飛ばされたぞ!!」
泥だらけになって、フィニアスか帰ってきた。
風の貴婦人がついていて、この有り様。
「着地が下手すぎです」
フィニアスは、片方の眉が上がる。
「俺は、これでも!!」
「エル・ロイル家に一番近しい家の魔法使いーー神の血を継ぐものですね」
「普通は、俺で上級なんだよーーお前や古竜が異常なんだ!」
ワタシは、心の中で笑った。
比べるものが間違っている。
「とにかくーー」
思い切り不機嫌な声である。
フィニアスは、言った。
「……いつまでここにいる気だ? 俺はここの魔族の匂いなんだ!!」
さすがに、光の血筋。
闇を嫌うなーー
ワタシは、あることを思いついた。
鞄からリンシャー王子の情報の皮紙を取り出す。
まだ、全てではない。
リンシャー王子とエイルの関係が全く見えないーー
「フィニ、お仕事です」
「ワタシからの、クエストです」
隠しておいたガマ口から、金貨を五枚ーー
フィニアスの前で。跳ねさせる。
「それ、俺が稼いだ金だろ」
「ワタシが管理してました」
しれっと言うワタシに、勝てるフィニアスではない。
「……で、何をしてこいと? 古竜絡みのことか?」
ワタシは、頷く。
「イーグが、執着しているエイル・ブレンと関係があった人物です」
「誰だ?」
「リンシャー・エル・ロード・アルテア。
エイルと同じ時代のアルテアの王子です。詳しい資料はここにーー」
ワタシは、皮紙の束をフィニアスに押し付けた。
「この王子のことをもっと探るのか?」
「はい、あなたなら、アルテアの王城にも潜り込めますねーー」
フィニアスは、ワタシから金貨を奪い去ろうとして、転んだ。
足がもつれたのだ。
やったのはワタシだ。
「リリ」
「もちろん、後払いです」
フィニアスは、チラリとイーグのほうを見る、
ーーそして、西ほうへ飛びた立っていった。




