第30話 イーグの力を回収
コンガが地方は、大陸の最南端にある。
汗が額に浮かぶ。
重い空気がまとわりついてくる。
人間の世界とは、異質な《《もの》》を感じた。
魔王城のあった場所ーーといわれる場所。
何もない。
ただ、不気味な暴風が吹いていた。
何もない瓦礫の中で、そこだけが異質だった。
「ここーー」
「なんだよ? リリベット。
俺は、ここには近づきたくないんだよ」
ーー 足がすくんでる
さすがに光の血筋だな。
ワタシは、フィニアスにイーグを風の中に置くように言う。
「この風、嫌なのにーー」
「ここに吹いてる風は、イーグそのものです」
「もしかして、安定するとか?」
「まだ、わかりませんが……」
フィニアスは、暴風の中に入って、イーグを地面に寝かせた。
その瞬間ーー
風が、わずかに揺れた。
荒れていたはずの流れが、ほんの一瞬だけ、ためらうように歪む。
よく眠っていたイーグは、急に目を覚ました。
ゆっくりと、立ち上がる。
その瞳は、どこか遠くを見ていた。
手を上げる。
命じるようにーーではない。
呼びかけるように。
応えるように。
風が、イーグへと寄ってきた。
荒れ狂っていたはずの暴風が、次第にその勢いを失っていく。
まるでーー
主を見つけたかのように。
ワタシは、息を呑んだ。
違う。
これは、ただの風ではない。
この場所に残っているのはーー
逃げ出した“あの日”の、イーグそのものだ。
風は、なおも集まり続ける。
拒むことも、抗うこともなく。
ただ、静かに。
イーグのもとへと、帰るように。
ーー風が止む。
そこは、今までと違う風が吹くようになった。
『戻って来たわ……』
いつになく、安定したイーグだ。
『教えて。ここで何があったのですか?』
『ゴアの町にいられなくなって、ここに逃げたわ』
『ゴアの町にも、神殿のものがきたのね?』
『ええ……でも、リンシャー王子が、風の精霊を使って教えてくれたのーーエイルをここに使わすって』
イーグの顔は、今まで見た中で一番ほころんでいた。




