第29話 逃亡
本当に、それから間もなくして、
神殿の騎士や、魔法使いが結界の外に集まりだした。
「だから、早くしろって!!」
「その前に、神殿との取引は無効になってます」
小屋の中へ戻る、
いつもの大きな鞄に数着のドレスを入れる。
ベルナール氏からの紙袋も忘れずに。
「リリベット、どこに行くんだ?」
「あなたの行ってきたところです」
「だって、外には一個駐隊いるぜ」
「だから?」
フィニアスは、寝ているイーグに目をやって、
「その古竜に、追い払ってもらおうとか?」
「バカですね」
「そうだ!! 俺たちまで死ぬぞ」
「死ぬのは、あなただけです。
ワタシは、滅多なことでは死にませんから」
準備が整う。
フィニアスにイーグを担いでもらうように説得した。
「嫌だーーおそらくこの世で一番恐ろしいものだ!!」
「それでも、Sクラスの冒険者ですか!!
もう彼女の真名は、わかっています。
あとは、どうやって、渡すかだけです」
「なんか、古竜を拾ってから、リリペットちゃん、怖くなった」
「ワタシを放置すると、任務放棄と見なされますよ」
「うっ……」
この言葉には、フィニアスは逆らえない。
ワタシは、人間ならすぐ即死のへベル草を、イーグの鼻もとに置いて嗅がせた。
一段と眠りが深くなる。
こういう使い方もあるんだな。
ちゃんと浄化してから、フィニアスにイーグを背負わせた。
ワタシの結界は、そう簡単には破れない。
外では魔法使いが、バチン、バチン結界に弾かれていた。
どこかに結界の綻びがないか、探す風の魔法使いもいる。
騎士は、スコップで地面を堀始めている。
ワタシは、心の中で笑った。
《入れるものなら、入ってくるがいい》
「おい!リリベット」
「はい、すぐに」
ワタシは、鞄を持って部屋の中央に立つ。
魔方陣か浮かび上がった。
ギョっとするフィニアス。
びびってるフィニアスを先に、魔方陣の中央に押しやった。
ーーそしてワタシも。
行き先は、エイルの向かっていた魔族の巣があった場所ーー
……あなたのエイルが消えた場所に。




