第27話 真名
『イーグ』
『なに』
ワタシは、悩んだ。
一晩かけて考えた。
考えた末に、こうする。
『あなたの真名がわかりました』
『でも……』
やはりだーー
イーグは、エイルからこの名前を受け取ることを望んでいる。
虚ろになっていく、イーグの瞳。
妖しく吹く風。
『だから、決めましたーー
あなたがエイルのことをふりきれたら、お渡しします』
イーグは、少しだけ微笑んだ。
『それは、きっと真名ではないわ。
エイルがつけてくれると言ったの』
『エイルは、ただ、真名を運んでいただけよ』
『それは嘘よ……』
ヤバい!!
風が強くなっていく。
小屋の軋む音が大きくなっていく。
彼女の髪が逆立ってきた。
『イーグ』
本気で、怒らせてしまったーー
『落ち着いてください、イーグ』
これ以上の、力の暴走は危険だ。
彼女の力は、大きすぎる。
ワタシにも、止められない。
普通の竜族なら、対処くらい出きるはずなのにーー
……これが古代種の竜の力。
窓は、完全に吹き飛んだ。
『エイルをいっしょに探しましょう。イーグ』
結界が一部壊れた。
結界の欠片が、屋根を突き破って落ちてきた。
『約束します』
『本当? 約束よ』
それだけ言うと、イーグは倒れた。
音もなく。
風も止まる。
ワタシは、額の汗を拭う。
今は、まだその時ではないのだ。
エイルのことを片付けない限り、イーグは、前に進めない。
ワタシは、風で散らばった、ベルナール氏の持ってきた資料を回収する。
気になったことがあった。
リンシャー王子の情報は、かなり詳しく晩年まで残っているのにーー
エイル・ブレンの情報は、二十歳で途切れている。
それ自体は珍しくもない。
ーーだがおかしい。
神殿監査官になった人間の記録が、
「その後一切残らない」など、あり得ない。
……まるで、削除されたみたいだ。




